日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『オッドマン11』
『オッドマン11』
道満晴明 コアマガジン ¥1,000+税
(2017年2月25日発売)
『ヴォイニッチホテル』、『ニッケルオデオン』、『ぱら☆いぞ』などの道満晴明が描く、変態だらけの青春群像劇、それが本作『オッドマン11』だ。
タイトルにもなっている「オッドマン」とは、直訳すれば「日雇い労働者」(なおSFの古典『アンドロメダ病原体』には「オッドマン仮説」という架空の理論も出てくる)。
「an odd man」は「奇妙な男」の意味になるが、最近では「人外」を指す言葉としても使われる。
本作でも猫耳娘や狗娘、イカ娘、単眼娘が登場する。
性的倒錯者や極度のコミュ障もオッドマンにカウントされている。
本作は変態たちの饗宴であり、いわばTAGROの傑作『変ゼミ』のJK版だ。
11番までナンバーをふられたオッドマンたちが高校生活を送る日々が描かれる。
なぜかモテる男性オッドマン「伊丹(弟)」に恋をしてしまった一般人のセツが、伊丹(弟)の恋人の座を射止めるために奮闘する。
やはりオッドマンである伊丹(姉)はサディストで伊丹(弟)とカップリングが成立してしまっているし、なにより残りのオッドマン9人すべてが伊丹(弟)の元カノで、彼女たちをすべて倒さなければ恋人にはなれないから……と書いてしまうと非常にバカバカしいのだけれど。
この狂った設定のうえで、セツを中心として綴られていくそれぞれのオッドマンとの交流が、じつにグッとくる。
いってしまえば「百合」の範疇なのかも知れない。
カリッカリに抽象化された筆致で描かれる変態というか特殊体質の彼女たちの友愛や性愛は、デフォルメされているぶんだけどこかしら切実で読者の胸をチクチクと刺激してくる。
岩井俊二原作で道満晴明が描いた『花とアリス殺人事件』や、麻草郁原作・小島アジコ作画の『アリス・イン・デッドリー・スクール』、あるいは『がっこうぐらし!』を彷彿とさせる不思議な雰囲気がある。
本巻にはまだすべてのオッドマンが登場していないし、巻末の著者あとがきには次巻の告知もあるので、続きを期待したい。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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