『小田扉初期作品集 そっとロワイヤル』
小田扉 太田出版 \800+税
(2015年3月6日発売)
『団地ともお』でまさかのメジャーブレイク(!?)をはたした小田扉の、初期の入手困難な2冊『そっと好かれる』『男ロワイヤル』からの厳選+単行本未収録作品からなる短編集。
全22作品、いずれも一言で説明するなら「風変わりなキャラクターと不条理な設定&ストーリー展開によるシュール・ギャグ」といった感じなのだが、飄々と小気味よい語り口と、やけにリアルな心理描写がクセになり、不思議にココロにしみ入るのだ。
なかでも最高なのが、野木さん・高枝さん・古野さんという「変な女子」3人のシリーズ。
課長との日々の会話から、好みの女性を推測&影でそっと努力するものの、不気味にしか見えない野木さん。常に長い棒を携帯している高枝さん。お気に入りの角山くんの教科書を盗み、リコーダーを舐める古野さん……。
彼女たちの言動は他人から見ればキテレツ極まりないのだけれど、本人たちは大まじめで一生懸命で……。そんなふうにしか生きられない不器用な彼女たちがおかしくって愛おしくって、たまらない!
大半が10年以上前の作品にもかかわらず、その奇妙な作品世界は色褪せるどころか、いまだフレッシュな違和感を放ちつづけている。
この非凡な才能に世間はもっと気付くべき! とつい鼻息荒くなる一方で、やはり小田扉という秘境は「そっと」楽しむべきだよなあ、なんて。ファンとしてはフクザツなのです。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69