『コンプレックス・エイジ』第1巻
佐久間結衣 講談社 \570+税
(2014年8月22日発売)
愛するゴスロリファッションを心から楽しめなくなった34歳女性を描いた読み切り版「コンプレックス・エイジ」は、2013年度前期・第63回ちばてつや賞一般部門にて入選作品となり、作者の佐久間結衣氏のデビューのきっかけとなった。1巻にはこちらも収録されている。
夢中になっていた趣味が、加齢のため以前よりも自分がフィットできなくなったと自覚する苦い心の動きに焦点を当て、モーニング、イブニング、アフタヌーン3誌共有のWEBサイト「モアイ」に掲載されると総閲覧数125万PVに達するなど話題をさらった。今流行のアラサーの自意識を描いたもののなかでも、新しい切り口といえる。
連載版では、女児向けアニメ『マジカルずきん☆ウルル』のメインキャラクターである少女ウルルを、高身長ながら夢中でやっている26歳派遣社員の片浦渚(コスネーム・凪)が主役となり、「コスプレ」がテーマになっている。
イベントの花形といわれるコスプレイヤー(レイヤー)たちだが、コスプレとはかかるお金も労力も相当なものであり、トラブルも多いことも描かれる。
それでも渚は心身を削ってウルルの衣装を「まとう」。体型維持やポージングを決めるためモデル並みの努力をし、仕事先はもちろん親にも隠しながらコスプレイベントに行き、衣装を製作する。手にするのは、自分が二次元の憧れのキャラクターになりきれた、という喜びだけ。
そんななか、素顔がウルルによく似た小柄なレイヤー・アヤと知り合い、彼女の方がウルルコスに向いているのではないか、と渚の葛藤は高まる……。
「好きなことを本気で楽しむ」のは、簡単なようでじつはイバラの道だ。むしろ本気の度合いが高いほど、心をえぐられることが多々ある。人に理解されない趣味ならば、なおさらだ。渚の前には、今後また別の壁も立ちふさがる予感だ。
とはいえ、渚を理解してくれるよき友だちにも恵まれており、作風は明るい。「COSPLAYMODE」監修の用語集「コスペディア」も付属しコスプレの入門編としても使えるマンガであり、一見華やかなレイヤーたちの裏側がうかがえ、趣味に対する「覚悟」も突きつけられる作品だ。
<文・和智永 妙>
ライターたまに編集。『このマンガがすごい!』以外に、「マンガナビ」公認ナビゲーター、ほかアニメ記事など書いています。