日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『リスボックリ』
『リスボックリ』
大川ぶくぶ ワニブックス ¥820+税
(2017年2月25日発売)
『ポプテピピック』が一種のキャラクターコンテンツとしてもブレイク中の大川ぶくぶによる新作4コママンガ『リスボックリ』。
Webコミック媒体「コミックガム」で連載されていた本作が、今年2月下旬に単行本の発売を迎えた。
とある森のなか、1本のおおきな木のうろを住みかとするリスがおりました。
ある日、リスはかわいらしい人間の少女に出会って心惹かれ、ぜひ自分を飼ってもらいたいと願い出ます。
少女はすでにイヌやネコを飼っているから……と断りますが、リスはめげずに自分が役に立つところをみせて気に入られようとがんばります。
はたして、彼(?)は望みどおり飼いリスになることはできるのでしょうか?
……というメルヒェンチックな大筋はあるが、そこはなんといっても大川ぶくぶ作品。
ふつうの起承転結はあっけなく複雑骨折を起こし、「え、そのキャラがどうしてそこからそんなリアクションを!?」と読者を混乱にたたきこんでいく、脱・論理的な笑いがてんこもりの1冊になっている。
一見かわいらしいリスが突然目を血走らせてふてぶてしい態度になり、少女の飼い犬やら仲間のリスやら宇宙人やらを相手にやるかやられるかのバイオレンスな状況に突入したり、脈絡なく時事ネタをつっこんできたり、出版社(ワニブックス)をあらわすワニを劇中に出しては原稿料にいちゃもんをつけるなど、とにかくやりたい放題。
後半には、本作連載中にいったん終わっていた『ポプテピピック』の主人公コンビがゲスト出演して、出版社の垣根を越えたひどい手土産を渡してくる一編もあり、必見である。
た、竹書房ーーーっ!!
暴力的な牧歌感、安定した脱線、筋の通った不条理。
ひっくるめて、“ファンシーヤクザ”とでもいうべき大川ぶくぶ独自のギャグ世界は本作でもエンジン全開だ。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7