日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『山本アットホーム』
『山本アットホーム』
山本アットホーム KADOKAWA ¥820+税
(2017年1月23日発売)
2013年頃からSNS上で人気を博していた、知る人ぞ知るWEBギャグマンガ『山本アットホーム』(作者・山本アットホーム)が、KADOKAWA運営のWEB マンガサイト「ComicWalker」での連載を経て、このたび、ついに書籍化された。
いきすぎた純粋さを持つゆめみ・いのり姉妹、うだつが上がらなすぎるおとうさん、山本家を支配するおかあさん……狂気の一家・山本家が織りなす日常をポップな絵柄で描いた本作は、「アットホーム」を冠するタイトルからは想像もできない不条理な世界観が魅力。
ポップな絵柄での不条理ギャグというと、『あいまいみー』や『ポプテピピック』といった作品をぼんやりと想像するマンガファンも多いかもしれないが、『山本アットホーム』はそれらの話題作と比べても、ひと味もふた味も違う仕上がりとなっている。最大の特徴は、その特異な作劇方法だろう。
普通のギャグマンガならばページ単位で引っ張るレベルの強烈なオチを平均して1~2コマに1回という極小スパンで消費してしまうという、なんとも豪勢な語り口が生み出す圧倒的スピード感は、まさに本作が生み出した新たな「発明」といえる。限界まで引き上げられた情報密度は 1ページのショートマンガを読んでいるという事実を忘れさせてくれるほどである。
また、時事ネタや攻撃的なネタも比較的少ないため、アバンギャルドな作風に反して間口が広いのも魅力のひとつ。
ぜひともギャグマンガ界の新風を味わってほしい。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。