日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『カリガネ』
『カリガネ』 第1巻
森みつ 新潮社 ¥580+税
(2017年6月9日発売)
独眼竜の二つ名でも有名な、戦国武将・伊達政宗。
信長・秀吉・家康らと同世代に生まれていたら、天下を狙えていたかも知れない、としばしば語られる“遅れてきた英雄”だが、東北の外様大名でありながら、徳川秀忠・家光らから深い信頼を獲得していたととされるなど、遅れてきたなりにたくみな立ち振る舞いをなしとげていたように見える。
そんな“戦場”ではなく“政治”の舞台で闘う伊達政宗を描いてくれそうなのが、森みつ『カリガネ』だ。
関ヶ原の戦いから3年後の慶長8年、徳川家康の征夷大将軍・宣下を目前に控えた江戸、家康の後継者・秀忠の剣術指南役を務める柳生宗矩の“弱み”を握った伊達政宗が、政治の舞台で成り上がりを狙う。
徳川将軍家御用達の腹黒暗殺者みたいな役で登場することも多い柳生宗矩が人を斬れないお人好しの好青年として登場したかと思いきや、彼が仕える秀忠は温和な外面の下で覚悟を決めていたりと、一風変わったイメージが新鮮な、戦わない戦国マンガ。
ヤンチャな青年・政宗が3代将軍・家光に慕われるイケジジイになる過程がぜひ見たいので、長く続いてほしい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas