日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『猫ヶ原』
『猫ヶ原』 第3巻
武井宏之 講談社 ¥650+税
(2017年6月16日発売)
『シャーマンキング』や『重機人間ユンボル』(のちに『ユンボル -JUMBOR-』と改題されリニューアルスタート)などで知られる武井宏之の猫時代劇『猫ヶ原』の第3巻が登場。
会えば斬りあう強くて悪い猫同士を描いてきた本作だったが、一見、無関係に見えた彼らが、じつは因縁を抱えた者たちであったことがおぼろげながら見えてきた。
主人公・ノラ千代が仕えてきた主人は史実でいう「石田三成」にあたる人物で、ほかにも天草四郎を思わせる人物なども見え隠れし、チャンバラだけにとどまらない、大河ドラマ的なスケール感を漂わせ始めている。
まあ、しかし、そんな難しいこと考えずとも、見開きを多用したダイナミックな構図が次から次へと展開される戦闘シーンをめくっているだけでもワクワクする。
なかでもやっぱり主人公・ノラ千代。
勝てないとなったら逃げるのも辞さず、勝つためには便所に潜むのも厭わない。
トラウマ持ちでヤク中。女の前では猫を被る。卑怯で残酷で生き汚い。
そんな「カッコイイ男」の定義からはまるで外れた存在でありながら、それでもその生きざまにはオッサンだから出せるすごみを感じる。
しかしこんなオッサンがもとは遊郭にいたってどういうことなのだろう?
第4巻の「ルローキティ」編も楽しみにしている。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas