日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『彼女に合わせる顔が無い』
『彼女に合わせる顔が無い』 第1巻
磐秋ハル 集英社 ¥600+税
(2017年6月19日発売)
表紙とタイトルのとおり、無頭文字(むとう・もんじ)には、顔がない。
肩から上が幽霊らしい。
そんな彼が、幼なじみの野山かおりに告白した。返事はイエス。
幸せな学生生活が始まった! ……気がするけど、顔がない。
人間が相手に感情を伝える際重要になるのは、言葉、声色、そして表情だ。
目の前にいて顔が見えないのは、そういう面では致命的だ、と無頭は思っている。
ところが、このマンガ内で2人の意思はしっかり通じあっているからすごい。
無頭はずっと、顔がないことで苦労し続けてきた。でも彼は決してめげない。
気弱なんだけども、人にとても優しくて気配りができる。マメで気づかいができる。
礼儀正しい。
しかも料理や手芸もうまく女子力激高。
臆病なところがあるわりに、かおりの前ではいつも明るく振る舞って、こっそり気を利かせる。
それを感じているから、かおりは無頭が好き。
「無頭だって 負けないくらいイケメンだぜ? 顔無いけど」
出落ちのような設定のこの作品、読み進むにつれて無頭の魅力が膨れあがってくる。
彼はみんなに愛され、彼女と少しずつ愛を深め、幸せになってきている。
かおりは「そんな情けない顔すんなよ!」「はじめてだったんだ 無頭のあんな顔見たの」という。
完全に身体の見えない女性を描くマンガ『のぼさんとカノジョ?』でもそうだが、物理的に見えなくても、コミュニケーションを重ねるうちにキャラクターの「顔」は見えてくる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」