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『魔法使いの嫁』第2巻 ヤマザキコレ 【日刊マンガガイド】

2014/09/28


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『魔法使いの嫁』第2巻
ヤマザキコレ マッグガーデン \571+税
(2014年9月10日発売)


この作品最大の魅力はズバリ、人ではない存在・人外と、まだ幼い少女の組み合わせだ。じつに絵になる。
特に魔法使いこと、エリアスのデザインがすばらしい。
身体は人間の男性。顔は犬の頭骨にヤギの角を持った、人間以外の何か。
骨だから表情がなく、感情がわかりづらい。これが物語の深みをぐっと増している。

舞台はイングランド。連れて来られた15歳の日本人の羽鳥智世・通称チセは、一見どこにでもいそうな少女だ。 物語は、なぜかチセが競売にかけられるところからスタートする。
どうやらチセは「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」という特殊な人間らしく、高値で取引されている。それをエリアスが落札した。人身売買からスタートするマンガってちょっとすごい。

セリフを聞いていると、日本は普通の人間だけが暮らす国のようで、エリアスの住むイングランド周辺はファンタジーな世界の人外な住人であふれているようだ。
エリアスは彼女を落札したのだからどう扱っても構わない。しかし彼はチセを自分の弟子にすると宣言。しかも嫁にするとまで言い出した。
どこまで本気なんだか、表情が見えないのでわからない。

チセへの嫁宣言はあまりに唐突で、作中でもあまりラブラブ感はない。だがチセはエリアスをなぜか信じようとする。 ここが作品のキモだ。エリアスがチセを、落札した人間として、かつ育てる弟子として、かつ守るべき嫁として扱う。
落札したヒトを、急に大切な存在として扱う感情って、そう簡単に生まれるものだろうか?
2人の信頼関係は、かなり特殊だ。

彼女は意外と肝の座った少女で、そうそう動じない。落ち着いた視点で見る、緻密な絵で描かれたファンタジー世界は、見ているだけで心地よいはずなのに、ちょっとだけ不安に満ちている。
人間の少女と人外の、信頼以上恋愛未満。エリアスの正体の謎も含め、続きが気になる作品だ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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