365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月25日はうま味調味料の日。本日読むべきマンガは……。
『ドラえもん』 第13巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥429+税
7月25日は「うま味調味料の日」。
これは1908年の本日、東京帝国大学(現在の東京大学)の教授であった池田菊苗博士が「グルタミン酸ナトリウムを主成分とせる調味料製造法」の特許を取得したことにちなむ記念日。
そしてその翌年に当時の鈴木製薬所によってこの特許が商品化されたものが、ご存じ「味の素」である。
もともと「うま味」なるものは日本の「だし文化」と密接な関係があり、それゆえに西洋文化圏では4基本味とされていた酸味・甘味・塩味(えんみ)・苦味のうちのいくつかの要素が調和した状態にすぎないと長らく思われていたが、2000年に舌の味蕾にある感覚細胞に、最初に発見されたうま味の主成分であるグルタミン酸の受容体があることが発見されたことにより、世界的にうま味の注目度が急上昇。
現在では第5の基本味として認識されている……というワケ。
さて、うま味の世界的認知に至る道のりもなかなかドラマチックなのだが、ことマンガにおいて印象的なうま味関連のエピソードいえば、ドラえもんのひみつ道具のひとつである「味のもとのもと」が登場する「ジャイアンシチュー(てんとう虫コミックス版第13巻に収録)」をおいてほかにはないだろう。
もちろんこのアイテムは「味の素」が現実に存在したからこそのものではあるが、それを忘れがたいものにしているジャイアンシチューのインパクト抜きに語るわけにはいかない。
そもそも1コマ目で「人間はさ、しゅみをひろくもたなくちゃいけない」と、したり顔で料理を語るジャイアンからして見どころ満載すぎるのだが、おなじみの「ジャイアンリサイタル」以上に直接命に関わりそうな「ジャイアン料理研究発表会」で披露されたジャイアンシチューは、あまりの強烈さゆえに多くの人々の記憶に残り、バラエティ番組などでもしばしば実際につくられているほど。
そのオリジナルレシピはひき肉とたくあん、しおから、ジャム、にぼし、大福、そして「そのほかいろいろ」であることが作中で明らかになっているが、これを心からおいしそうに完食することができる「味のもとのもと」がどれほどすばらしい調味料なのか、非常に興味をそそられるところ。
なにせ、最終的にはうっかりこの調味料をかぶってしまったジャイアン本人が食欲の対象になるぐらいですからね……。
ま、さすがに生きたままの人間は無理にせよ、あらゆる料理が超おいしくなる「リアル味のもとのもと」が、本家の味の素株式会社から実際に商品化されることも期待したいものである。
ところでジャイアンの料理のほうは、てんとう虫コミックス版第41巻の「恐怖のディナーショー」でまさかの再登場。
ジャイアンリサイタルとの悪魔合体というのもスゴイのだが、こちらはジャムやたくあんに加えて「セミのぬけがら」が食材(?)に使われていたことが判明している。
そういえば最初のジャイアンシチューも、よくよく読むとのび太が食べるシーンで「バクバク」や「ムシャムシャ」に混じって「パリパリ」「バリ」という音がしているのだが、これも「そのほかいろいろ」扱いだったセミのぬけがらだった可能性も……?
せめてこれ、たくあんの音だといいんですけどね。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。