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【速報】ジャイアン、Mステ前に新曲を準備⁉【B級ニュース】

2017/06/13


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「ジャイアン5年ぶりに新曲発表⁉」について。


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『ドラえもん ジャイアン編』
藤子・F・不二雄 小学館 ¥438+税
(1999年9月16日発売)

先週6月9日(金)、世界のミュージックシーンを揺るがす大事件が起きた。
アニメ『ドラえもん』の「スランプ!ジャイアン愛の新曲」において、ジャイアン(a.k.a 剛田武)が新曲をドロップしたのである。
ジャイアンの新曲はおよそ5年ぶりで、6月15日のバースデーにあわせて「愛」をテーマにした新曲を用意した、とのこと。野球チーム「ジャイアンズ」がホームスタジアムとして使用している、土管広場での新曲リリースとなった。
つまり、スタジアムライブである。
だが、そこで思いもかけない事態が起きた。

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『てんとう虫コミックス ドラえもん』 第17巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥429+税
(1979年6月27日発売)

そもそもジャイアンは、レッド・ツェッペリンの熱烈なファンである。
てんとう虫コミックス第17巻に収録された「タッチ手ぶくろ」では、レッド・ツェッペリンのTシャツを着た姿を拝むことができる。
レッド・ツェッペリンといえば、「移民の歌」はだれもが知る名曲だろう。
かつてはプロレスラーの超獣ブルーザー・ブロディが入場曲に使用し、また近年ではマーベル・シネマティック・ユニバースの新作『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年11月公開予定)の予告編動画にも使用されている。
自分の好きなものをTシャツで表現するのは、ロックファンか、ホラー映画ファンくらいのもの。そのことからも、ジャイアンが重度のレッド・ツェッペリンのファンであると推測できるはずだ。
そんな「ツェッペリン・リスペクト」のジャイアンが「愛」をテーマに新曲……となれば、あふれるほどの愛(whole lotta love)に満ちた曲になるとだれもが予想していた。

ところが、である。
ジャイアンの新曲『ありがとう、オーレ!』は、なんとラテン風の陽気な楽曲であったのだ。
これはいったいどういうことなのか?
突然のラテン転向に、われわれオーディエンスは驚きを禁じえなかった。ジャイアンリサイタルの独占放映権を取得しているテレビ朝日にいたっては、この新曲発表のスタジアムライブを、国民的音楽番組「ミュージックステーション」の直前にぶつけてくるという暴挙をしでかす始末。
長年のグルーピーたちは、アーティストに対する愛と忠誠心を試されているかのようだ。

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『HIGHER AND HIGHER』(kindle版)
広く。 NeNe ¥300
(2014年4月29日発売)

しかし、同じくテレビ朝日で放映されている別の番組に目を移せば、この「ラテン転向」の成功例を見ることができる。
それは「ワールドプロレスリング」でおなじみの、新日本プロレス所属のプロレスラー・内藤哲也選手である。
内藤選手は、かつてはベビーフェイス(善玉)としてリングにあがっていたが、いまひとつ観客の心をつかみきれていなかった。いや、むしろブーイングを浴びていたほどだ。
ところが、メキシコ遠征を経てヒール(悪役)ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を結成すると、これが大ブレイク。リング上で「トランキーロ(焦んなよ)」や「カブロン(馬鹿野郎)」といったスペイン語を連発し、今では試合後に会場全体が「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の名を高らかに叫ぶほどになり、内藤選手は一躍、新日本プロレスを代表するトップレスラーの座にのぼりつめたのである。
まさに「ラテン転向」の成功例といえるだろう。
そんな内藤選手がまだ「ラテン転向」をする前、絶対的エースの逸材棚橋弘至選手の背中を追いかけていた時代をマンガ化したのが『HIGHER AND HIGHER』(広く。)だ。
内藤選手がIWGPヘビー級選手権でチャンピオン棚橋選手に初めて挑んだ軌跡を、なんと学園マンガにした異色作であり、『プ女子百景』でおなじみの著者が描いている。
「後輩が先輩に挑む」というシンプルな対立構図を軸に物語を構成しているので、プロレスに詳しくない人でもわかりやすく読むことができる。また、実際に内藤選手や棚橋選手がリング内外でいったセリフをネームに使用しているので、プロレスファンならより深く味わうことができるはず。
今年1月4日の東京ドーム大会、そして先週6月11日の大阪城ホール大会でも「内藤vs棚橋」のタイトルマッチが組まれており、両者のライバル関係は現在進行形である。その原点を知るには最良の1冊だ。
では、ジャイアンの「ラテン転向」は内藤選手のように成功するのだろうか?
その答えはもちろん、「トランキーロ(焦んなよ)」。

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『背すじをピンと!~鹿高競技ダンス部へようこそ~』 第1巻
横田卓馬 集英社 ¥400+税
(2015年11月4日発売)

ジャイアンの「ラテン転向」には驚愕したが、しかし本当にわれわれが苦労するのはこれからだ。
レッド・ツェッペリンに影響を受けたロック歌唱であれば、耳をふさいで……もとい、拳を振りあげて熱狂していれば、まるで気絶でもしていたかのように、いつしかリサイタルは終演を迎えたことだろう。だが、ラテンとなれば話は別。
これからのオーディエンスは、ただ黙って聞いているのではいけない。
ダンスを求められるはずなのだッ!
おそるべし、ラティーノ・ヒート(ラテンの情熱)。
いきなりラテンのダンスなんて踊れない!
授業の必須科目に「ダンス」を盛りこまれてしまった小学校教諭のような悩みが、全世界のジャイアン・ファンを苦しめることになるのだ。
だが。
友よ、心の友(パレハ)よ。
そんなキミたちのために、心強い作品を用意した。
それが『背すじをピンと!~鹿高競技ダンス部へようこそ~』(横田卓馬)だ。
主人公の土屋雅春は、高校入学を機に競技ダンス部へ入部。それまでまったくの素人であったが、優しくも厳しい先輩たちの導き、さらにパートナーとなるヒロイン・亘理英里のかわいさもあって、どんどんと競技ダンスの世界にのめりこんでいく。
わたりちゃんかわいい。
さて、競技ダンスにはスタンダードとラテンがある。
主人公はスタンダードをやるのだが、2年生の先輩・イケメンの八巻章はラテンダンサー。そしてアフロヘアにオネエ口調の3年生の部長・土井垣真澄は、スタンダードとラテンの両方をこなすテンダンサー。
土井垣と八巻が、情熱的なラテンのステップを披露してくれる。そして彼らのパートナーとなる女子の、セクシーなラテンダンス用の衣装からも目が離せない。
この作品でラテンのリズムのなんたるかを学ぼう。

近年の劇場版『ドラえもん』は、ウンタカダンス(2016年『新・のび太の日本誕生』)や、パオパオダンス(2017年『のび太の南極カチコチ大冒険』)と、ダンスを大々的にフィーチャーしているのが特徴だ。このうちウンタカダンスは、棚橋弘至選手や真壁刀義選手(入場曲は『移民の歌』布袋寅泰バージョン!)がPRしていたのだから、今回のジャイアンの「ラテン転向」問題とも浅からぬ因縁がある。
ジャイアンの新曲に合わせたダンスも、そのうち披露されるかもしれない。
かつてのドラえもん・チルドレンが夏祭りで音頭を踊り狂ったように、日本中のジャイアン・キッズがラテンを踊りまくる日が来るかもしれない。
『ありがとう、オーレ!』は、現在テレビ朝日の公式音楽配信サイト「テレ朝サウンド」などで配信中なので、今からきたるべき日に備えておこうではないか。

では、その日まで。
アディオス!



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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