日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バスキュレ』
『バスキュレ』 第1巻
鷹野久 新潮社 ¥660+税
(2017年7月7日発売)
妖怪の悩み相談を引き受ける不思議な貸本屋を舞台にした物語『向ヒ兎堂日記』が、累計30万部を超えるヒット作品となった鷹野久の最新作。
草食動物である「兎」が肉食動物である「狼」を支配する世界。
塔の構造をした国の、上階の1番街から13番街は兎が住み、それより下の階層には虐げられた狼が住み、フロアは下へ行くほど治安も暮らしも悪くなる――という独創的な設定の世界観にまず魅了される。
「狼は凶暴だから」と武装し、彼らが上階に侵入してきた際には容赦なく攻撃できる権利を持つ、兎の「狼番」ベルは、ひょんなことから階下の狼たちと交流を持つようになり、この世界の構造に少しずつ疑問を抱くようになる。
絵柄もかわいらしく、いかにも今どきのマンガらしい兎&狼耳の異世界ファンタジーかと思いきや、随所で現代の人間社会を照射するような描写も多く、なかなか侮れない。
この世界を取り締まる美しい「女王」の存在もミステリアスで想像を掻き立てる。
ファンタジー好きならずとも、今後の展開が楽しみになる作品だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69