日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『タイムスリップオタガール』
『タイムスリップオタガール』 第2巻
佐々木陽子 ほるぷ出版 ¥600+税
(2017年8月9日発売)
アラサーオタク女性の城之内はとこが、中学時代にタイムスリップしてしまった衝撃コメディの第2巻。
90年代のオタクシーンにどっぷりひたりながら、保持できた大人の画力でマンガを執筆……と、とんとん拍子にはいかない。
なんせ中身は大人でも、今のはとこは中学生なので、親からマンガ禁止令を出されるリスクもあるし、学校の先生の教育的配慮も、なかなかの難敵だ。
さらに、はとこの暗黒期の原因となる、いじめっ子の男子もいる。
しかし、いざ対峙してみると、はとこは彼に「あわれみ」すら感じる。
思春期まっただなかは、みんなイライラしている。なのに、その感情をうまく表現したり、発散したりするすべをまだ得ていないし、大人たちの心づかいをくみとる余裕もない。
中学生ならではの悩みは、いつの時代も普遍だ。
はとこのタイムスリップは、ノスタルジーだけではない、広い世代へのセラピー効果もある。
中学生という生きものは、充満したエネルギーの行きどころを持て余しているが、そのぶん、好きなものを好き、と思う気持ちもとても純粋だ。
それをいい大人になっても保持しているのがオタクであろう。やっぱり、なんだかんだで楽しいものだ。
女子の友情を謳歌したり、野球部男子(ようやく名前が判明!)の家へ遊びにいったりと、甘酸っぱいメモリアルも積みあげ、このまま漫画家への夢を叶えられる……? と思いきや、急展開が!
ブラックすぎる「オチ」でないことを祈るのみだが、どんなルートをたどっても、はとこにエールを送り続けたい。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌のほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集。とある学生街に在住し、いろいろと画策(だけ)しつつ、男児育てに追われる日々です。