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10月12日は長嶋茂雄が現役引退を表明した日 『あぶさん』を読もう! 【きょうのマンガ】

2014/10/12


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『あぶさん』第30巻
水島新司 小学館 \485+税


今年のセ・リーグは巨人が3連覇を決めた。長嶋茂雄終身名誉監督は「原(辰則)采配が光った。球団創設80周年の記念すべき年に優勝できて良かった」とコメントしている。元気そうで何よりだ。

ちょうど40年前の1974(昭和49)年10月12日。中日が巨人のV10を阻み、ついに優勝を決めた。長嶋はこのタイミングで引退を表明。中日にとっては20年ぶりの優勝だったにもかかわらず、翌日の新聞は長嶋引退の記事一色となってしまった。
それほど影響力の大きい、日本球界が誇るスーパースターだったのだ。

酒豪のスラッガー“あぶさん”こと景浦安武が大活躍する『あぶさん』がスタートしたのは長嶋が引退する前年の昭和48年。あぶさんはこの年にドラフト外で南海ホークスに入団した。
もともと素質は一流だったが、高校時代に二日酔いで打席に入ったことがバレ、エリートコースから脱落。流浪の社会人野球生活を経て、おなじみ「大虎」で酒をあおっていたところを岩田鉄五郎に見い出されたのだ。
以降、ダイエー、ソフトバンクと親会社は変わったものの、62歳までホークスで活躍を続けることになる。

『あぶさん』には現役の選手が実名で登場するが、セ・リーグ一筋の長嶋とパ・リーグ一筋のあぶさんが同じグラウンドに立つ描写が1度だけあった。
第2巻・第七章のエピソード「からみ酒」である。時はあぶさん入団1年目にあたる昭和48年。南海 と巨人がリーグ優勝を果たし、あぶさんは巨人が3勝1敗で臨んだ第5戦のラストバッターとして登場。堀内からホームラン性の当たりを放つも、フェンス際で高田にキャッチされてしまう。結果的にその打席で巨人が優勝を決めるわけだが、あぶさんの打球を見た長嶋は「あの景浦の目...まさしく鷹の目だ」と呟いている。
翌年は南海も巨人もリーグ優勝を逃し、長嶋はそのまま現役を終えている。

それから 7年後の昭和55年、突如あぶさんにトレード話が持ち上がる。しかも移籍先は長嶋が率いる巨人である。結果的にこの話は噂レベルで霧散したが、当時のスポーツ新聞には「彼になら背番号3を譲ってもいい」との衝撃的な長嶋コメントが掲載されている(あくまでマンガの中のお話です)。

昭和59年にはスランプに陥ったあぶさんに一声かけるため、長嶋がわざわざ「大虎」に駆けつけるという事件も。トレードは失敗に終わったが、いつもあぶさんのことを気にかけていたのだろう。「大虎」からの去りぎわ、長嶋は「失敗は成功のマザーですよ!!!」と叫ぶ。
これが読者に強烈な印象を与え、今でも長嶋語録のひとつとしてネット上に拡散されているが、実際に長嶋が使ったという記録が見つからない。あくまで作者の水島新司が長嶋風に考案した台詞のようだ。

その『あぶさん』も今年2月で41年の連載に幕をおろした。
長嶋が引退して以降の40年間、日本球界とともに併走してきた『あぶさん』の終了に、あらためて寂寥感を禁じえない。



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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