『シェイファー・ハウンド 戦車と知られざる女性部隊』第4巻
吠士隆(作) かたやままこと(画) 白泉社 \648+税
(2014年9月29日発売)
大戦後期のドイツ。国内外が荒れるなか、黙々と任務を遂行する女性部隊があった。名前は「シェイファー・ハウンド」。女性の戦場での運用性実践試験部隊だ。
彼女たちの恐ろしさは、自らの命を失うことをまったく恐れず突き進むこと。作戦はいつも、正面突破の繰り返し。正気の沙汰ではない。自分たちを「消耗品」と呼び、死ぬ直前まで作戦遂行に全力を尽くす猟犬だ。
この小隊の隊長に任命された青年、ユート。彼は「人は死なないほうがいい」「消耗品なんかじゃない、君たちは人だ」と強く訴える。
しかし戦場では、彼の言葉はまったく意味をなさない。全員を救うなんて無理なのだ。
作中では多くの人間が負傷し、陵辱され、殺される。特に序盤で死ぬ隊員2人の死因は、意外なものでぎょっとする。戦争中は、思いもしないところで人は死ぬ。
第4巻では、自らの部隊をいくらでも犠牲にして、狩りのように戦争を楽しむイギリス軍が登場。シェイファー・ハウンドの少女達3人も、嬲り殺しにされた。ユートは憤怒に駆られ、復讐の殺意をむき出しにする。
それに対し、小隊長代理だった少女カヤは言う。「お前のそれは『戦争』ではない! ただの人殺しだ!」
現実的には、戦争も人殺しも一緒だ。しかし「戦争が人を殺す」のと「憎しみが人を殺す」のは異なるのではないかと、この作品は問いかけてくる。
消耗品になろうとする姿はあまりに悲しい。人の命は大切にするべきだ。ユートの「仲間を死なせたくない」という悩みには、深く共感できるだろう。
とはいえ、途中出てくる戦車のウンチクも面白いし、読んでいてワクワクする。アクションシーンはマンガとしてかっこいい。
命を消耗品にして殺しあう、戦うためだけの少女たちを「美しい」「もっと見たい」と感じてしまうのが、この作品の怖いところだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」