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『すみっこプリマ U-15』第1巻 三ツ沢大介 【日刊マンガガイド】

2014/11/02


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『すみっこプリマ U-15』第1巻
三ツ沢大介 徳間書店 \620+税
(2014年10月11日発売)


まず驚くのは、コマの使い方だ。
いちおう体裁は「4コママンガ」。縦に読む、画面二分割の方式をとっている。
ところが3コマになることもあれば5コマになることもある。斜めにカットされることもあるし、ぶち抜きや枠線なしも多々ある。何より起承転結のカタチをほとんどとっておらず、最下段のコマは次の行の最上段のコマにつながる。上から下へ、まるで小説を読んでいるかのようだ。
さらに、一話ごとの最初と最後には、通常のマンガのコマ割り(左上から右下に読む)が挿入される。
この特殊な手法が、物語を効果的に演出していく。

ヒロインのボタンは、もともとバレエをやっていた少女。彼女のしなやかで美しい歩行、絶妙な筋肉を見て、筋肉フェチの少女・タンゴが目をつける。
タンゴはさっそく彼女に声をかける。「女子フットサル部に入らない?」
かくして、ボタンはフットサルの世界に足を踏み入れることになる。
チーム制のスポーツマンガなので、出てくるキャラクターの数が多い。このマンガは、一人ひとりにスポットを当てることに力点をおいている。ここで、特殊なコマの運用が生きてくるのだ。

スポーツアクションシーンは基本縦読みで描かれる。変則形式なので、見せたいコマは大きく取ることができる。特にボタンは、仕草一つひとつが「元プリマ」として描かれる。立ち、歩き、座る。明らかに他キャラと違う。
ほかの少女たちも、今までの生活や練習量によって動きが異なるのをちゃんと表現している。
これらを縦読みで描くと、1ページの情報量が安定した分量で増えていく。行動からかいま見えるキャラの心理状態を、じっくり読めるのだ。

フットサル部に入ったボタンと仲間たちの楽しい生活を描くこの作品。しかしなぜかボタンはもともとバレエをやっていたことを誰にも言わない。ボタンはフットサルを楽しみはじめるものの、まだ心を開ききっていない。
ボタンが取る行動はすべて、しなやかで美しい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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