『KATANA 襲刀』第1巻
かまたきみこ KADOKAWA/角川書店 \580+税
(2013年12月21日発売)
11月8日は「刃物の日」。刃物に感謝する日として、主要な刃物の産地では使えなくなった刃物を供養する行事も行われる。岐阜県の関市で行われる刃物供養祭には、全国からたくさんの刃物が送られてくるそうだ。
「刃物の日」制定の由来は、「いいは(118)の日」の語呂合わせ。また昔から旧暦の11月8日に、金属の加工にかかせない“ふいご”を清めて祝う「ふいご祭」が行われる日であることからだという。
モノにも心が宿る、だからこそモノを最後まで大切に扱おうという考えかたはとりわけ日本に根強いが、ここで紹介する『KATANA』シリーズは、まさにそんな気持ちにさせられる物語。
本作の主人公・成川滉は、鎌倉時代から続く刀鍛冶の家で育った高校1年生。若くしてすでに研ぎの才能を身につけているのは、幼いころから高名な刀匠である祖父や父の仕事ぶりを見ていたためだけでもなく……彼には、なぜか刀の魂が見えてしまう特殊能力があるのだった。
滉にとっては刀は友だちのようなもの。彼が刀に触れれば、刀が人や獣の形となってその本性を現す。めちゃくちゃなついてくる刀もあれば、なかには危険なものもあるのだが、持ち主に手ひどい扱いを受けたり、呪わしい経験をした刀の魂を救うこともしばしば。
人を傷つける道具ではなく芸術品として……刀の美しさ、一刀ごとの個性をだれよりも深く感じ取る主人公のやさしい目線が印象的。刀の来歴も興味深く読ませる、一話完結の連作シリーズだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」