『わくらばん』第4巻
桂明日香 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス \780+税
(2014年10月24日発売)
「コーポわくらば」には、ひとり暮らしの若者たちが住んでいる。庭に住人たちが集まって、たまに一緒に食事をしている、ちょっと変わったアパートだ。
引っ越してきたばかりの青年の真白。巨乳で元気な伊紅、ロリ系天才女子大学生・桃子、静かで清楚な女子高生の葵、オタク系SE・久朗など、個性的な面々に囲まれて過ごす、ドタバタラブコメディだ。
活発かつ寂しがり屋な伊紅が子犬のようにじゃれてきては、ドキドキする。幼なじみの橙子がこっそり真白に好意を寄せる。不器用な葵と真白の間にフラグが立ち始める。何これうらやましい。
モテなさそうな久朗にぞっこんな、美少女高校生・黄色のかわいさも見逃せない。
この作品のキモは、真白以外のどのキャラにも、影があることだ。悩んでない人間がいない。
もっとも目立つのは葵。料理がうまいため、「わくらば」の食事会担当としてみんなに愛されている。しかし彼女は、心に大きな爆弾を抱えている。
第4巻では、葵の問題が暴露され、彼女の心の傷がばっくり開いてしまう。
彼女の「わくらば」での生活は終わるのではないか。住民たちは葵を思いやり、そっと支える。そして無垢な真白が、無意識のうちにすべて受け止めてしまう。なるほどこれはモテるわ。
前作のファミレスラブコメディ「ハニカム」の楽しさと、作者の持ち味である人間の屈折描写、両方が遺憾なく発揮された作品になっている。
8割明るく2割ヘビー。このバランスが、変人すぎる面々に深い人間味を与えている。
共感力の高いこの作品。「わくらば」の食事会は、きっとどんな人でも受け入れてくれるはずだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」