『ギャートルズ 1 肉の巻』
園山俊二 パルコ \2,100+税
語呂合わせ大好きな日本人には説明不要!? 11月29日は「いい肉の日」。
宮崎県の「より良き宮崎牛づくり対策協議会」が、宮崎牛の味と品質のよさを広くアピールするために制定した記念日である。
マンガに登場する肉といえば、だれもが思い浮かべるのが原始人たちの生活をのんびりザックリ描くギャグマンガ『ギャートルズ』の「あの肉」だろう。
だれが呼び始めたのか定かではないが「あの肉」で通じるのだから、いかにインパクトが強かったということか。ちなみに「マンガ肉」「ギャートルズ肉」とも呼ばれている。
「あの肉」には、骨付きのかたまり肉と、マンモスの輪切り肉の2種類がある。どちらのタイプも食品メーカーから、その形状を再現したものが販売されているほどの人気ぶりである。
さて、現在もっとも入手しやすい『ギャートルズ』の単行本1巻は「肉の巻」というサブタイトルで、食に関するエピソードを集めた編集版だ。
幼子を抱えた奥さんが「お前さん食べものとってきとくれ」と言うと、ゴロ寝していた夫はめんどくさそうにしながらも、石斧を片手に立ち上がる。そしてマンモスを見つけるや脳天に一撃! マンモスの毛が生えた外皮もそのまま、豪快に輪切りにした円盤状の肉に家族全員でかじりつく。
その光景は、確かに人間の本能的な感覚に訴えかけるものがある。うーん、なんておいしそう!
『ギャートルズ』は1965年から1973年にかけて発表された作品だが、シンプルで大胆、前衛的な表現は今見ても新鮮きわまりない。
アニメでしか知らないという方にも、ぜひ悠久を感じる原作の魅力を体験してほしい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」