『ぽちゃまに』は当初ぽっちゃり女子とぽちゃ専イケメン男子による最高のラブコメディ誕生! コンプレックスを受け入れ、ほんわか笑顔で周りを癒すぽっちゃり体型の女子高生、本橋紬。そんな異色のヒロインと「ぽっちゃりマニア=ぽちゃまに」男子の田上くんが織りなす恋愛模様はとにかくあったかくてニヤニヤが止まらない。「このマンガがすごい!2014」でオンナ編7位にランクインした人気作がついに登場!
後編はコチラ!
平間要『ぽちゃまに』インタビュー【後編】 自己満足の世界を出て漫画家に。そこからは努力!!
学生時代からぽっちゃり女子に熱視線を注いでいた!
――少女マンガのヒロインのタイプも多様化してはいますが、ここまで「ぽっちゃり」を前面に押し出したヒロインは前代未聞だと思います。このヒロイン、本橋紬はどのように生まれたのですか?
平間 当初『ぽちゃまに』は読み切り作品だったんです。まず、最初に担当さんからは「とにかくイケメンを描け」という指令があって、そこははずせません。じゃあ、ヒロインは思いっきり私の好きなタイプにしようと。以前から私、ふっくらした女の子が好きだったんです。
――企画というわけではなく、ズバリ先生の好みど真ん中だったんですね。
平間 そうなんです。少女マンガ誌のなかでも「花とゆめ」はちょっとマニアックな雑誌ですよね。その読者に応えるキャラ作りの重要性は感じていて。キャラクターを作るときにフックというものを考えると……ただ人気のありそうなネタ、おもしろそうなネタを注ぎこむんじゃなくて、やはり自分が思い入れをもてるものじゃないと勝負できないと思いました。
――ぽっちゃりヒロインを提案した時、編集さんに反対はされませんでした?
平間 いいえ。そこは二つ返事でOKをいただきました。「え、描いていいの?」って、意外でしたけど。読み切りだったからできた挑戦だったかもしれませんね。こういう子は絵的に見たことがなかったので、描いてみたらどんなふうになるだろうと。
――マンガだと設定上「ぽっちゃり」とされていても、実際の絵ではそこまで太ってなかったりしますよね。少女マンガの「ブス」が99%ブスではないように。
平間 そんなにぽっちゃりさんに描かないですよね。なので、どうせなら遠慮なくやろうと思いまして。少女マンガでは主人公はかわいくなきゃいけないというのに反発心があったこともあります。私がアマノジャクだからかも?
――もともとそういう意識も根底にあったんですね。
平間 当時の担当さんと「好かれるヒロイン像」について話していた時、「ある程度モテたほうがいい」と言われたことがあるんですけど、そこには納得がいかなかったです。
――モテるヒロインに共感できるかどうかも、読み手によって違うかもしれません。
平間 多くの男の人が女の子を外見でジャッジする時、紬みたいな子は第一段階で選別からはずれてしまう。でも、そうじゃなくてもっと女の子の中身を見てほしいなという思いもこめています。女子向けのマンガですけど。私が女子校育ちなぶん、女子の裏の顔もずっと見てきているからかもしれませんが。
――でも、男性がみんな必ずしも細い子や超美人が好きなわけでもなく、いろんな好みがあるのは事実ですよね。ぽっちゃり好き男子も実際いますし。
平間 「ぽっちゃりマニア」という言葉、それをもっとキャッチーにしたい……と思ってできあがった言葉が『ぽちゃまに』です。
――それがそのままタイトルに。
平間 わかりやすいと思ったんですよね。今も『ぽちゃまに』にしてよかったと思っています。
――紬の体型をどのくらいにするかというのはけっこう迷いましたか?
平間 1巻を見ていただけるとわかるんですけど、今よりやせてるんですよね。どんどんふくらんでいってます。
――なかなかリアルなぽっちゃり加減ですよね。
平間 身体だけじゃなく、画面によく出る腕や手、指の太さには気をつかっています。指は赤ちゃんみたいにぷにゅっとした感じを目標に描いてますね。
――紬ちゃんはまさによくいるぽっちゃり感で、このリアルさを描くのはなかなかハードルが高いと思うんです。いっそもっと太くすれば記号的というかマンガならではのデフォルメという意味が出て、かえってリアルさは薄まる気がします。
平間 なるほど……そうかもしれませんね。
――もともとふっくらした女の子が好きだとおっしゃいましたが、それはいつ頃から?
平間 私、ナイナイの岡村さんが好きなんですが、岡村さんはだいぶぽっちゃりした女の人が好きなんですよね。「あ、そうか、こんな男の人がいるんだ」と知ったんです。それで、自分を振り返ってみたら、森三中さん【注1】が好きで、柳原可奈子さん【注2】もかわいいなあと思っていたし、馬場園梓さん【注3】も……。「あ、私、コロコロしてる子が好きだったんだ」と気づいたんです。
――ずっと自覚がなかったんですね。女子校時代は?
平間 当時はまったく気づいていなかったです。でも、今になって思い返すと、色白で小柄でふっくらした子のことはたぶんよく見ていたんですよ……。
――田上くんみたいに「二の腕ぷにぷに」とかしてなかったですか?
平間 それはしてなかったですけど(笑)。私は身長が高いので、じゃれてて女子に抱きつかれることがけっこうあったんですよ。そんな時は抱きしめてましたね、ぎゅっと。
――いかにも女子校ですねぇ。
平間 ちなみに私も実際、ずーっと二の腕ぷにぷにしてる男性に出会ったことがありまして(笑)。やっぱりこういうの好きな人っているんだなあと。
――好みはそれぞれで……ただ、細い子が好きなのが「多数派」という思いこみがあるとしたら不幸ですよね。実際の数の問題じゃなくて、多数派かどうかを気にすることが。
平間 みんな自分の趣味を大事にすればいいと思います!
――読者の方からはどんな感想が寄せられていますか?
平間 「自分もぽっちゃりなので紬の気持ちがわかる、共感する」というお手紙が多いです。また、今は結婚して子どももいる方が「若い頃は体型に悩んだけど、ぽっちゃりな私を好きだという人が現れた」という経験を綴ったお手紙もありました。印象的なのは「『ぽちゃまに』を描いてくれてありがとう」という言葉です。マンガを描いて「ありがとう」と言ってもらえたことが、とてもうれしくて。
――紬が突然モテたのではなく、ぽっちゃりの自分を受け容れるまでの道のりが描かれているからこそ勇気づけられる読者もいるし、より幅広い読者の共感を得るのではないでしょうか。
平間 1話で終わるはずだったので、長く描きつづけられて幸せです。
――「このマンガがすごい!2014」でオンナ編7位にランクインしたご感想は?
平間 本当にびっくりしました。ありがとうございます! 「また会いたい」と思ってもらえるようなキャラを作ろうと思って描き始めたのですが……紬はいわゆる美少女ヒロインではないけれど、みなさんがそう思ってくれたのかなと思うとうれしいです。
- 注1 森三中さん 大島美幸、村上知子、黒沢かずこの3人による大人気女性お笑いトリオ。3人ともぽっちゃり体型ながらかわいらしく個性的なファッションとキャラクターで女性からも人気が高い。
- 注2 柳原可奈子さん 「ショップ店員コント」などのネタで大ブレイクした女性お笑いタレント。公式プロフィールによれば身長153cm体重74kgのぽっちゃり体型だが、最近かなりやせたとの噂も。
- 注3 馬場園梓さん 隅田美保との2人によるお笑いコンビ「アジアン」として活躍するお笑いタレント。公式プロフィールによれば身長155cm体重73kg。しかし、「よしもとべっぴん・ぶちゃいくランキング」の「べっぴん部門」で3年連続1位となり殿堂入りするほどかわいらしいルックスの持ち主で、女性ファッション誌のモデルなどもおこなっている。ちなみに『ぽちゃまに』公式サイトにて「ぽちゃカワ女子代表」として「ぽっちゃり普及委員会」の会長を務めている。