『マコちゃんのリップクリーム』第11巻
尾玉なみえ 講談社 \600+税
(2014年12月9日発売)
カバー裏面にすら「打ち切り女王」と書かれる尾玉なみえが、「月刊少年シリウス」でなんと7年半もの長期連載を成し遂げた本作。
クドいぐらい強調されているが、今回は打ち切りではなく、初の大団円、完結であります。
といっても、内容は驚くほど通常運行。
もっとも、その通常運行が極めて異常……いや、ユニーク(と、いちおうソフトな物言いにしておこう)なのが尾玉なみえ作品なのだが、第1巻と最終巻である第11巻を読み比べてみても、少々キャラクターが増えている以外は、基本フォーマットもテンションもほとんど同じであることに驚きを隠せない。
毎度のパターンとしては、どうしようもない魔女(とは名ばかりの、ただの残念な高齢処女)ザイアーに託された「魔法のリップクリーム」を使って、主人公である目保マコ(めたもまこ)が変身。
そんな「魔法少女もの」のフリをしつつ、登場人物が極端に欲望に正直すぎたり、心に闇を抱えすぎていたりして、まったく善行にはならずに最終的にザイアーに呪いがはね返る……と、本当にこの定型フォーマットが延々と繰り返されるのである。
それが単行本にして11巻も続くのは、むしろスゴい! と断言したい。
そのくり返しを飽きずに読ませてしまうのは、いかに尾玉なみえのキャクター造形やセリフの言語感覚が特異であるかということの証明でもあるのだから。
なお、めでたく完結ということで、11巻の巻末には尾玉なみえを愛してやまない各方面の漫画家から届けられたお祝いのイラストも掲載。
さらに次回作の連載も決定しており、もしかして、すっかり売れっ子漫画家……?
あとは10巻発売時点で行ったプロモーション「アニメしてもええんやでキャンペーン!」が実を結ぶことを応援するばかりだが、作者自ら絵コンテ・原画・監督をつとめた「先に作ったオープニング」のあまりの下品さには、「まぁ、これが地上波で放送される機会は当分無いかな」と……。
これからも、いつまでもキワドいギャグ路線を突っ走っていただければと思います。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。