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『かつて神だった獣たちへ』第1巻 めいびい 【日刊マンガガイド】

2015/01/05


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『かつて神だった獣たちへ』第1巻
めいびい 講談社 \428+税
(2014年12月9日発売)


やりきれねえな。
もともとは、民衆を守るための兵士。どうしても勝たねばならず、人間のかたちを捨て、禁忌の技で異形のもの「擬神兵」となり、戦った。英雄であり、神とも崇められた。
なのに戦争が終わった今、強大すぎる力は脅威となり、獣扱いされた。人の心も蝕まれ、人間をも捨て命がけで戦った兵士は、排除されねばならなくなった。
やりきれねえったらありゃしねえよ。

スプリガン、ミノタウロス、ベヒモス。とても人間が敵う相手ではない。
それを倒すのは、「獣狩り」と呼ばれるかつての擬神兵の隊長、ハンク。彼もまた、今は人間の姿をしているものの、擬神兵のひとりだ。
彼に擬神兵となった父親を殺された少女シャール。復讐にきたものの、ハンクとその部下たちの、あまりにも切ない殺し合いを見て、ともに旅をすることになる。父親が本当に獣狩りに殺されるべきだったかを、確かめるために。

たとえばミノタウロス。迷宮に閉じ込められたという伝説とは逆に、死ぬことに恐怖して身を守るために迷宮を作ってしまった、心の弱い兵士のなれのはてだ。人を殺しても止まない彼の恐怖を止めるには、本人を殺すしかない。
ハンクは冷静に戦ってはいる。だが仲間を殺さざるをえない心中。あまりにもせつない。

兵隊だったときのハンクと仲間たちの回想が、やりきれなさに拍車をかける。
善も悪もない。殺すか、殺さずどこかへ去るのを見送るかの、どちらかだ。

ぜひ、ハンクとシャールが見届ける、獣たちの最期にたむける思いを、感じてみてほしい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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