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『マガツクニ風土記』第6巻 あまやゆうき(作)吉田史朗(画)【日刊マンガガイド】

2014/10/22


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『マガツクニ風土記』第6巻
あまやゆうき(作)吉田史朗(画) 小学館 \552+税
(2014年9月30日発売)


異形の怪物をめぐる戦いの物語が人気だ。『進撃の巨人』『テラフォーマーズ』などのヒット作、そこには架空世界と怪物のビジュアルや設定、バトル展開のおもしろさが詰まっている。
そうした意味では、完結を迎えた吉田史朗・あまやゆうき『マガツクニ風土記』は、異質な作品かもしれない。

舞台は、いつの時代ともどこともわからない場所。ただ、日本ではあるようで、人々は農業を営みながら古代のような牧歌的な暮らしをしているが、ひと昔前の現代日本を思わせるものも多々存在する。
そんななか、農民の少年・カズチは、神託によって神防人(ミサキモリ)に選ばれる。神防人は、国のために働く名誉職。そのうえ、年貢も免除されることになる。カズチは意気揚々と村を出るが、何もわからないまま仲間たちとともに連れていかれたのは護国鎮守隊というところで、彼らの使命とは“マガツモノ”と呼ばれる怪物と最前線で戦うための訓練だった……。

ここに登場する“マガツモノ”とは、かつて人類を壊滅に追い込んだ怪物で、その究極の存在が箱に収まっている“ヒトマガツ”。カズチたち鎮守府の兵士が“マガツモノ”を押さえ込もうとする一方で、“マガツモノ”を狙う反政府の武装集団も存在する。
はたして、“マガツモノ”の正体と人類が滅亡した理由とは?

本作が異質で、かつおもしろいのは、主人公たちが戦う理由、そして敵の正体がはっきりされるところにもある。
戦う理由もわからない。敵の正体も分からない。異形との戦いの物語のおもしろさは、そこにさまざまな心理考察や社会分析ができるところにもある。しかし、『マガツクニ風土記』が訴えるものは明確だ。この時代、今の日本だからこその不安や恐怖。敵の正体、戦う理由、その触れかたと扱いかたには賛否両論出ているが、作品のありかたとして興味深くおもしろい。

原作者・あまやゆうきの現在連載中の最新作は、脚色を担当している、国防軍を持った日本を舞台とした『今、そこにある戦争』(原作・テーラー平良、作画:稲井雄人)。
『マガツク風土記』も、タイトルは民族学や神話のファンタジーを思わせるが、作中で描き出される「マガツクニ」とは、今の日本。本作は、その風土記なのだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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