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『最近この世界は私だけのモノになりました……』第2巻 唯登詩樹 【日刊マンガガイド】

2015/01/11


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『最近この世界は私だけのモノになりました……』第2巻
唯登詩樹 集英社 \600+税
(2014年12月19日発売)


セクシーマンガ界の重鎮・唯登詩樹が贈る、SF(スコシ・フシギ)な物語である。

主人公はエッチ大好きな女子大生の美希。ある朝目を覚ますと、世界中から自分以外の人間が消えていた。
電気も水道も止まった都会でただひとり。はたして美希はどう生き抜いていくのか?

と、たいへんな状況を描いているが、ヒロインが享楽的な性格なので、肩の力が抜けた空気が漂っている。
オシャレな靴を履くために、高いヒールで歩けない場所には行かないとか、食料を確保するより熱心に、下着やアダルト玩具を集めるとか、「極限環境のサバイバル」というカタい表現におさまらないおもしろみがある。
路上でエロ衣装をまとって闊歩するヒロインの描写は、美少女絵師・唯登詩樹の真骨頂。

そうしてお気楽に進む一方、心理面からはストーリーがぴりっと引き締められている。
暗闇を恐れる美希は、ひとりエッチで気絶するほど絶頂しないと眠れない。人目を気にせず自由を楽しむ最中、いきなりかんしゃくを起こす姿も描かれ、これが本質的にはやはり孤独についての物語であることを突きつけて、読者をハッとさせる。

物語途中から美希以外の生存者も登場してロードムービー展開へ移るのだが、そこで彼女は安眠のためオナニーの手伝いやセックスをひっきりなしに要求して同行者を呆れさせる。その際、焦点が当たるのは「美希はどうしてそんな風なのか?」という単純な疑問。
現時点ではまだ断片的にしか語られていないが、美希の「エッチが好き」は依存症に近く、過去にひどい性経験を強いられた反動らしい。彼女は人類消失以前から、性的な“サバイバー”だったのだ。

消えた人類に何が起きたのか。正体不明のストーカー、閉ざされた巨大ゲート、不気味な飛行物体などの意味は。
それら世界レベルの謎と、美希個人の心理の掘り下げが同時に進んでいるのを見るに、もしかするとそこに密接な関係があるのかもしれない。

セクシー表現に目を喜ばせるもよし、ファンタジックなサスペンスとして真相に想像をはせるもよし。追いかけがいのある作品になっている。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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