『あそびあい』第2巻
新田章 講談社 \562+税
(2014年7月23日発売)
本作のヒロイン・小谷ヨーコのことを、なんと形容するのが正しいのだろう。
セックス原理主義者? 清楚系クソビッチ? ド天然の快楽主義女子高生?
うーん、どれもこれもしっくりこない。
1巻の巻末に収録されている、連載のプロトタイプとなった読み切りで紹介されているが、ヨーコの家は「わりとビンボー」(本人談)である。ビッグダディばりの大家族というわけではないし、両親も揃っているが、低収入のクセに見栄っ張りの父親が衝動買いを繰り返すせいで、家計は常に火の車らしい。
だもんで、彼女の全身には節約思考が刷り込まれ、「もったいない精神」を最優先させた日々を送っている。
誘われれば誰とでも寝るというビッチな行為も、「気持ちいいことを逃したくない」という表れであり、セックス依存症というわけではないのだ。
ヨーコが生まれ育った町が典型的な地方都市であるという点もポイント。
子どもたちの笑顔があふれていた駄菓子は潰れ、コンビニとショッピングモールが住民を支配する、どこを見渡しても同じような風景が続く場所。
そんな町から浮き立つように禍々しい光を放つラブホテル。部活で汗を流すわけでもなく、DVDプレイヤーもパソコンも携帯電話も持っていないヨーコにとって、セックスは極上の娯楽であり、コスプレ好きの中年男や、テクニックは皆無だけど性豪のチャラ男といったセフレたちは、決して手放したくない存在なのである。
まぁ、ヨーコはそれでいいだろう。でも、こんな女子に本気でホレてしまった山下はたまったもんじゃない。
ヨーコの親友・横井みおのサポートもあって、晴れて恋人同士になった2人。だけんどもヨーコはあいかわらずマイペース。なにせ、山下の名前すら知らないのである(ハルユキです)。
てなわけで、あいかわらずセフレのオッサンと変態プレイに興じていたヨーコだったが、犯行現場を山下に取り押さえられてしまう。
そんな修羅場でも悪びれないヨーコ。彼女は謝罪するどころか、究極の問いを山下にぶつける。
「付き合ったらなんで他の人とエッチしてはいけないの?」
「好き同士なら独占し合いたくなるものだ」と主張する山下に対しては「独占って束縛でしょ? それってお互い無理とか我慢しなきゃでさぁ 楽しくなくなっちゃうよ」と答える。
うん、まぁ別れますよね。付き合っている意味がないもん。
でもね、男だって「独占し合いたい」だのなんだの言っても、結局は「死ぬまでにいろんな女とやりたい」という願望があるわけで、どんなにきれいごとを並べても、ヨーコの胸には1ミリも響かないのだ。
ホント、山下のいうように「好きってなんだろう」ね。
さて、この2巻では椿ちゃん(高1女子・処女?)という新キャラが山下の前に現れ、彼が本当に望んでいた(手順を間違えない)ピュアな恋愛が幕を開ける。
ヨーコによって精神汚染が進んでいた山下は、健全な男子として再生することができるのか? 相性のよかった山下とエッチができなくなったヨーコに、これまでとは違う感情が芽生えるのか?
風雲急を告げる3巻は来年2月発売予定……って! 待ちきれない人は「モーニング・ツー」で続きを読みましょう。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
個人サイト ドキュメント毎日くん