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『さよならガールフレンド』 高野雀 【日刊マンガガイド】

2015/01/23


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『さよならガールフレンド』
高野雀 祥伝社 \680+税
(2015年1月8日発売)


同人誌として制作・発売された表題作が、コミティアの見本誌読書会で、第1位を獲得。
注目を集めていた高野雀の待望の初単行本が出た。

『さよならガールフレンド』は、閉塞感漂う地方都市を舞台にした「ガール・ミーツ・ガール」の物語。
誰と誰がどうだとか、噂話がすぐに広まる町で、息苦しさを抱えながら暮らす女子高生・瀧本ちほ。彼女の母親が「よそ者」ゆえに、この町を嫌っているが、大半のクラスメイトや付き合って2年になるちほの彼氏は、ここで一生を終えることになんの疑問も持たず、毎日を楽しげに過ごしている。
そんななか、ちほはみんなが「ビッチ先輩」と呼ぶ、金髪のヤンキー女子と知り合い、なんとなく話をするようになる――。

ロードサイドのコンビニやスーパー、原チャリでの移動、荒涼とした暗闇にライトアップされた工場のネオン……。そんな地方都市で暮らす女の子の閉塞した日常描写は、ダニエル・クロウズ『ゴーストワールド』や山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』を思わせるが、ドン詰まりに風穴を開けるエンディング、その切なくもあたたかな眼差しに、著者の人柄がうかがえて、すがすがしい気分に。

ちなみに「ヤン女萌え」って言葉、著者のあとがきマンガで始めて知ったけど、コレわからなくもない! と目からウロコ。人って自分にはないものを持つ相手に憧れるものです。
その他、迷えるアラサー女子の「面影サンセット」、こじらせ女子の「まぼろしチアノーゼ」、地元の幼なじみの女の子2人の過去現在これから「わたしのニュータウン」など、全6編。
いずれも、なんてことのない日常の小さなきらめきを淡々と慈しみをもってとらえた、非凡な秀作ぞろい。このタイトルセンスにひっかかった人、ぜひ!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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