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『踊る!アントワネットさま』第2巻 にしうら染 【日刊マンガガイド】

2014/09/21


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『踊る!アントワネットさま』第2巻
にしうら染 芳文社 \619+税
(2014年9月5日発売)


マリー・アントワネットといえば、希代の浪費家として悪名高い話が数多く残っている人物。「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」のセリフを思い出す人も多いだろう。
ところが実際に歴史を調べてみると、この発言がアントワネットのものだという根拠はひとつもない。民衆の反感を買っていた彼女のイメージとともに、虚実が入り混じってしまったのだ。

女性同士の友情を通じて、マリー・アントワネットはどんな人物だったかの一説を掲げるのが、この作品だ。
画家志望の少女マリーが17歳の時に出会った同い年の彼女は、少し世間知らずで無邪気な普通の女の子。貴族のしきたりに縛られて思うように生活できず、王妃としての自覚が足りないと叱られ、涙を流す極めて純粋な少女だ。
2人のマリーは無二の親友として、身分の差を越えて仲を深める。第1巻では2人の友情と成長を、第2巻は王政の最期に2人が向きあう革命編を描いている。

本作が興味深いのは、フランスのルイ一族がどのような人々だったのかを作者が大胆に解釈して、有名な詐欺事件として知られる「首飾り事件」など、史実として残ったエピソードに誤解があるのではないか、とメスを入れているところだ。
アントワネットが浪費癖があったのは紛れもない事実。しかし浪費していたのは、彼女が純粋すぎたからだ、と本作は描く。「困っている」とたかってくる周囲の貴族たちに丸め込まれていたのではないか。ウワサがひとり歩きして、多くの人にあることないこと言われてしまっていた可能性は高い。

画家のマリーが見るアントワネットとルイ一族は、至って普通の温かい優しい家族。友人としての視線で見ると、罪がないのに中傷を浴びせられる様は痛々しい。
なぜマリー・アントワネットだけがここまで悪い印象になりがちなのか。ゴシップの裏に隠された、ルイ一族の本当の姿……優しい夫と少女のように純粋な妻の姿が、もしかしたらあったのではないか?

盛りこまれているエピソードは、ほとんどが史実に基づいて描かれているフィクション。気になる部分は、真偽のほどをぜひ調べてみてほしい。
この作品でマリー・アントワネットが「ケーキを食べればいいじゃない」なんて言わないのは、作者のしっかりとした理念があるからだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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