『ピコピコ少年SUPER』
押切蓮介 太田出版 \660+税
(2015年2月5日発売)
著者である押切蓮介が、自らのゲーム人生を描いた自伝的作品『ピコピコ少年』シリーズ最新刊。
小1でファミコンと出会い、PCエンジンの中古を求めてさまよい、不良におびえながらもゲーセンで戦闘ゲームに興じ、『FFV』発売日には夜中から並び、秘密基地で親に隠れてゲームボーイに没頭。
中2でパソコンのエロゲーに開眼。ゲームイベントにも足を運び、現在もPS3やWiiで現役プレイ……
そんな80~00年代ゲーム史の変遷をそのままに伝えるリアルな体験記は、ある意味、歴史の教科書にも等しく、著者のような「ピコピコ中年」ならば共感ハンパないだろう。 しかし、ことさらゲーム好きでなくとも、いかに親の目を盗んでゲームをやるかのアホな画策、ゲームを通したホロ苦い恋や友情模様には、青春ノスタルジーを掻き立てられずにいられないわけで。
本書では、MMORPGの恋人とリアルで会うドキドキ&恐怖を描いた「MMO少年」が、最高!
コミケ後にみんなでドリキャスするはずが……の「アウェイ少年」。盟友・清野とおるの「悔しさを、憎しみをありがとう……」という言葉は、すべてのアウェイな人々の心を奮い立たせること間違いナシ。
ところで、押切蓮介といえば“例の事件”が気になるわけで。
最終章「糞袋中年」は、事件渦中の自宅での日々を描いた作品。
ゲームに溺れ、ゲームに励まされ、ゲームによって「ノスタルジックゲーム漫画家」という唯一無二のポジションを確立した矢先のトラブルの渦中にも、ゲームが純然たる「遊び」であり「癒し」として彼を支えていたことにホロリ。その傷を作品として描くことで昇華してみせる心意気に、思わず胸が熱く……。
来るべき復活の日を待ちつつ、まずは本書でその痛くも愛すべき世界を堪能して。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69