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【日刊マンガガイド】『紫電改のマキ』第2巻 野上武志

2014/09/07


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『紫電改のマキ』第2巻
野上武志 秋田書店 \562+税
(2014年8月20日発売)


ミリタリーマンガは「死ぬマンガ」と「死なないマンガ」の2つに分かれる。
ちばてつやの『紫電改のタカ』は「死ぬマンガ」。この作品は「死なないマンガ」だ。
「命を賭けた戦いの苦悩」はすべて排除。空を飛ぶ快感と、第二次大戦時の航空機による空戦は華麗でおもしろい、という表現に特化している。

女子高生の羽衣マキが通う石神女子高校は、ヒコーキ通学が可能な学校。何人かの生徒が第二次大戦時の戦闘機に乗って通学している。
マキの友人の長谷川素子は、学校の中で朽ちていた紫電改(戦闘機)を見つけ、コツコツと修復。飛ぶことに魅力を感じているマキの背中を押し、飛行機で大空へと羽ばたかせる。

空を飛ぶリスクは大きい。学校ごとに空域があり、それを侵犯した場合、最悪撃墜されることすらある。通学中に強襲されることもある。毎日が縄張り争いだ。
石神女子の空域と学友を守るため戦う「石神新選組」、熾烈な制空権争いを続けてイギリス軍用機を飛ばす「吉祥寺女学園」、いちゃもんをつけて飛び回る不良集団「フライングシャーク」などの熾烈な戦いが続く。

キャラたちは自分たちで戦闘機を整備し、空を飛び、空域を守っている。彼女たちの思いは様々あるものの、最終的には「飛びたい」のひとつに尽きる。ヒコーキ乗り女子高生は、ケンカをしつつもみんな爽やかだ。
周囲の大人たちもそんな彼女たちに慣れているようで、飛行機が墜落するのは日常茶飯事。若くていいね、大丈夫かい?ってなくらい。
戦闘を重く捉えず、学校同士のケンカ程度におさえているバランスの取りかたが実にうまく、女子高生が飛行機を操縦する様子を、安心して楽しめる。

特に、次々出てくるライバルのなかにおいても、空を飛ぶことはなによりも楽しいのだ!とまったくブレないマキの男前っぷりが最大の魅力。
2巻では、紫電改の声が聴こえるようになった彼女の、飛び抜けたエースパイロットっぷりが堪能できる。あいつの動き人間技じゃねえ。

零戦、スピットファイア、ウォーホークなど、有名な飛行機が飛び交うこのマンガ。空戦機動技術を人間の行動に例えることでわかりやすく描いているので、戦闘機入門にももってこい。
作中で語られるセリフは「計器は人間と違って嘘をつかない」や「心に翼を持つ奴に悪い奴なんていないさ」など名言が多いので、こちらもぜひ注目してほしい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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