『娘の家出』第2巻
志村貴子 集英社 \600+税
(2015年2月19日発売)
「このマンガがすごい!WEB」のロングレビューでも取り上げた作品の2巻目。様々な女性にスポットを当てたオムニバス群像劇だ。
離婚して男同士で暮らす父親。太った男性が好きな娘のまゆこ。従姉妹は彼氏とかけおち。親戚、友だち、その親……と、物語は時系列をも超えてあっちこっちへ。
みんな悩む。人を好きになるのってなんでこうも面倒くさいのだろう。
2巻で軸になっているのは、まゆこをはじめとしたクラスメイトの友だち4人「チーム離婚」。みんな親が離婚している。
父が大好きなきゃなこは1巻で、雰囲気に流されて家族持ちの男性とセックスしてしまった。
ニーナの家には、兄と姉が子連れで出戻り。子どもであふれかえって急にうるさくなり、平穏な日々を失う。
ぐっちの父は、彼女が生まれる前に逃げだした。今はミュージシャンで、どうやら逮捕されたらしいと知る。
「好きになること」への悩みが強かった1巻に比べて、2巻は嫉妬やいらだち、理不尽へのモヤモヤ、人嫌いの話が多い。
ある少女は「チーム離婚」と仲よくなりかけたのに、人といるのがつらくてひきこもってしまう。
まゆこがつきあうことになったぽっちゃり少年の母親は、まゆこの陰口をたたく。
どれもこれも、しかたない。嫌いになるなと言われても、なるようにしかならない。
それでいいのだ。ひきこもりになって初めて気づけることだってある。人を許さなくていい、とわかって忘れられることもある。一歩だけ前に進めば充分。
「家出」とは、この一歩のことかもしれない。
さてこの作品、曲名からサブタイトルがとられている。『夢見る少女じゃいられない』や『私がオバさんになっても』など、タイトルを気にしながら読んでみてほしい。
にしても篠原ともえの『クルクルミラクル』と本編のシンクロには驚いた。そうくるかー……。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」