『ザ・ファブル』第1巻
南勝久 講談社 \565+税
(2015年3月6日発売)
主人公・ファブルは、若くして日本の裏社会で伝説化している殺しのプロ。自称「記憶力のいい天才カーナビ女」の相棒とともに、鮮やかな手前でターゲットを暗殺する日々を送っていた。
そんなある日、鮮やかに「仕事」をこなしたファブルに新たな指令が下される。それは、地元ヤクザ・真黒組の庇護下の大阪にて、「殺しNG」の一般生活を営むことだった。
「どんな敵でも常に6秒以内に倒せるよう訓練してきた」とファブル自身が劇中で語るように、随所で描かれる戦いにおいての最小限かつ的確な動きの数々は、見事のひと言。
そんなファブルと、社会的には「ヤバい」ものの、どこか抜けてるキャラクターたちが織りなす人間的な日常のギャップが、たまらない味を出している。
第1巻では、プロの技で華麗(?)にトラブルを回避していくファブルが描かれるものの、彼をけむたがる真黒組の人間や、ある意味で一番の敵とも言える「表の社会」など、障害は数多い。
スリリングな「日常生活」を覗き見する快感がたまらないこの展開、この調子で続巻にも期待したい。
しかし、個人的にはファブルがこっそり持ちこんだ愛銃「ナイトホーク」が火を吹くところを、もっと見てみたい……というのもたしか。
日常の裏で密かに行われる、野蛮な殺しあいも楽しみだ。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
Twitter:@gakuton