『アニウッド大通り』第3巻
記伊孝 講談社 \650+税
(2015年3月11日発売)
団地住まいのアニメーション映画監督、真駒和樹。
子供は2人、家族4人幸せな生活を送っている……というのは家のなかでの話で、アニメ制作に入ると彼は鬼になる。
真駒監督視点は、真剣に、妥協せず、自分の作りたいものを全力で作る。
彼の創作意欲はとどまるところを知らず、子どもたちの遊びもすべて想像力で作り上げてしまう。そんな環境にそだった息子の樹貴は、ノートにびっしりとマンガを描くのが趣味になっている。
しかし世の中は非情だ。真駒監督は「今流行の作風」の作家に取って代わられ、自分の居場所を失い無職になってしまう。モチベーションもだだ下がり。
彼の真摯なものづくりには理解者も多い。友人は「一回の勝負で決着がついちまうほど!! 人生はそんな簡単なもんじゃねぇんだぞ!!」と叱咤激励。
3巻のラストでは、映画の話を持ちかけられ、彼は鬼になりきる決意をする。
真駒家4人全員の、青春の物語だ。
アニメに生きがいを感じ、監督として人生を投げ打つ勢いの父親。
彼を愛し、家族の幸せと、夫ののびのびとした創作活動を心から願う、少女のような妻。
時にサネヨシという少女に辛辣な批評を受けて挫折しかけつつも、父を尊敬してマンガを描く樹貴。
想像力にあふれていながら人見知りが激しく、絵ばかり描いていて、初めて友達になりたいと思った少女から拒絶され泣き伏す妹の園。
年齢層はバラバラだが、全員青春まっただなか。それぞれがベクトルは違えども「創作」に向かって、激しい熱意を持て余している。
さて、このマンガの巻末には、1998年に宮崎駿が開いた「東小金井村塾」に作者が参加した体験記が載っている。
厳しいながらも、鼻血が出るほど宮崎監督の熱意に当てられた作者の楽しさが伝わってくるので、ぜひ真駒監督の情熱と重ねあわせて読んでみてほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」