『アイドルマスター ミリオンライブ!』第1巻
門司雪(著)バンダイナムコゲームス(作) 小学館 \602+税
(2015年3月12日発売)
『ミリオンライブ!』は、数あるパラレルなほかの「アイドルマスター」シリーズとちょっと違う。
「765シアター」という、AKBシアター的なプロダクションおかかえの劇場を拡大していく作品だ。
シアターメンツは50人。元気印の「春日未来」、生まじめな「最上静香」、生来の天才肌「伊吹翼」の3人にスポットをあてながら、シアター付きの事務所に飛びこんでアイドルとして登壇するために、がんばる少女の物語を描いている。
人数が多いので群像劇的な側面はあるが、今はわからなくても問題なし。
事務所直属シアター活動というのは、いうなれば狭い村。
1巻時点では外部のアイドルとの争いも接触もない。見にくるのは当然シアターのファンだけ。とても平和な世界だ。
だからこそ、内面的な問題が生じた時、そとに助けを求められないし、視野が広がらない。
最上静香は本当にまじめにアイドルになりたくて、レッスンをずっと続け、やっと登壇できたという14歳の女の子。
とはいえ、50人のシアターメンバーでは自分よりうまい人間なんてゴロゴロいる。たとえば自分がレッスンしたダンスを、一度見ただけの伊吹翼はさらに上手に踊ってのける。
焦りの末、練習のしすぎで脚を痛め、大事な登壇の日にステージにあがれなくなってしまう。
みんな優しいがゆえに、残酷だ。
努力は才能に勝てない。そんな現実を描きながら、少女たちが今目の前にあるステージにどう立ち向かうかを考える物語になっている。
アイドル残酷物語としてだけではなく、それを超えたものが描かれる準備が、1巻にはもう詰まっている。
ちなみに『アイドルマスター』劇場版に出てくるキャラクターと数人かぶっているが、まったくのパラレルなので、ご注意を。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」