『はぐれアイドル地獄変』第1巻
高遠るい 日本文芸社 \590+税
(2014年11月19日発売)
えーと……アイドルってなんだっけ。
Kカップ、沖縄出身の18歳。駆け出しのグラビアアイドル南風原海空(はえばるみそら)。
第1話で彼女に与えられた仕事が、企画物AV「黒帯アイドル百人組手 負けたら百人に輪姦されるッ」。
アイドルという言葉に、美化させる要素をいっさい加えない。それどころか、人間のどす黒い部分をどんどん注ぎこんでいるマンガだ。セックス、ドラッグ、アルコール、飲尿。
南風原はいたって純粋に、歌手を目指して業界に入ったはず。それがAV転落からのスタート。厳しい。
この困難を、「根性と度胸で乗り越えろ」という高遠るい流儀で描いていく。武器になるのは、彼女の特技、空手だ。鍛錬していれば、ヤバくても、なんとかなる。なるんだってば。
彼女の対になる存在が、20歳現役女子大生のAV女優・豪島セーラ。彼女はSMやスカトロまでこなし、デビュー1年目で100本超に出演する鉄人。どんな人が嫌がる行為でも「仕事」としてやりこなすプロフェッショナルだ。
「清純派」を目指したい南風原とは真逆。これも「アイドル」の究極とも思える。
南風原が少しずつ、格闘派巨乳アイドルとしてテレビに出始めてからは、さらに芸能界の闇の世界へ。彼女が鍛え上げた心身で、どこまで耐え抜けるのか。
この作品における「アイドル」とは、あらゆる苦痛を耐え抜き、己を貫く人間のことだ。
丁寧で気持ちのいい空手描写と、実在人物パロディのキャラクター。全体的にノリはライト。
「地獄変」の名のとおり、アイドル裏社会を描きながらも、大きなカタルシスを得ることができる。
泣いたり苦しんだりアナコンダに飲み込まれたりもしたけれど、私は元気です。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」