『マギの贈り物』
よしづきくみち 集英社 \620+税
(2015年2月19日発売)
天と地に分かれた恋人同士のすれ違いと強い想いを描く、ファンタジックなピュアラブストーリー。
幼なじみで恋人の、外園明里(ほかぞのあかり)が事故で亡くなって5年。四季一(しきだいち)は、彼女を忘れたくなくて、思い出の山へと登ろうとする。
それを「天ゴク」から見ていた明里は、あの手この手を使って、一に自分を忘れさせようとするけれど……。
一が明里にプレゼントした、小さな隕石。それに対して一は、石言葉を「永遠」とつけた。天ゴクにいる明里は、本当はまだこっそりとそれを身につけている。
明里は「永遠なんて約束じゃなくて呪いだ」、だから忘れるべきと公言している。しかし、もしもう一度地上に戻れるのならば、絶対忘れてほしくなんかないという自分の気持ちに気づいてもいる。
それでも一に新しい幸せを見つけてほしくて、明里は自分を忘れさせようと躍起になる。
また一は一で、そこかしこに明里の思い出を見つけ、いっそう深く自分の胸に彼女の姿を刻みつけていく。石言葉の「永遠」に恥じないように、明里を想い続けたい――。
すべてが相手のため、という本当に純粋な2人。これにはもとになっている有名な物語があり、作中にもマンガの形で紹介されている。それがO・ヘンリの『賢者の贈り物』だ。
あの美しいストーリーを著者がとても愛し、ていねいな絵柄で表現しようとしてるのが伝わってくるような、大切に描かれた作品だ(特に途中の見開き7連発! 圧巻です)。
天文少女の明里は、空ばかり見つめていた。地質学者に憧れる一は、地面ばかりを見つめていた。そんな正反対の2人。
だが彼らの場合の正反対は、相手のことしか見ていない、ということ。だからぶつかり合ったとしても、本当はすれ違うなんてありえないのだ。
そしてぶつかって、ようやく自分自身に向き合うことに気づく。不器用だからこそ愛おしい物語です。
泣けて、しかも心温まる、そんな話を求めている方に。
余韻のあるエンディングも素敵。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」