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『二ツ星駆動力学研究所』第3巻 林 健太郎 【日刊マンガガイド】

2015/04/14


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『二ツ星駆動力学研究所』第3巻
林 健太郎 集英社 \590+税
(2015年3月19日発売)


タイトルの「二ツ星」とは、プラモデルやミニ四駆で知られるメーカー・タミヤのロゴマークのこと。
つまりタイトルにある「二ツ星駆動力学」とは、ミニ四駆のことである。

ここで「ミニ四駆、懐かしいなぁ」と思った人は、ちょっと認識が間違っているかもしれない。
なぜなら、ミニ四駆は現在もバリバリ現役で進化を続けているホビー。子どもだけではなく、ガチで本気の大人も少なくはない。
というわけで、決して「懐かしの流行りモノ」などではないのです。

本作は、そんなミニ四駆の魅力にとりつかれた、いい歳したオトナたちを描くマンガ。
そして、多くのホビーマンガが「どういうわけか題材となるホビーが世の中の最重要事項になっている世界」だったりするのに対して、こちらは「ミニ四駆に興じるオトナに対して、一歩引いてる人もいる現実の世界」が舞台。

そもそもこのマンガ自体が、作者の林健太郎が、なかば無理矢理にタイトルにもなっているミニ四駆チーム「二ツ星駆動力学研究所」(「Twin Stars Mechanomotive Force Laboratory」を略して「TMFL」)に引きこまれ、彼らを描くマンガができるまでのドキュメントだったりもするのだが、ミニ四駆のすばらしさをことさらアピールするでもなく、ひたすら“ダメなオトナ”しか出てこない。
しかしその楽しそうな姿を見ていると、「自分もやってみようかなぁ」という気になってくる、不思議なホビーマンガ……というのが第1部。

続く第2部(単行本の第3巻はここから)は、そんな個性的なTMFLのもとに、女子高生のミナトがよく事情を知らずにバイトの面接にやってくるところから始まる。
正直、最初は「いきなりだな!」という気もしたのだが、何事に対しても冷めた目線でしか見ることができなかったミナトが、徐々に“子どもみたいな熱いオトナ”に感化され、かつて父親が熱中していたミニ四駆を自分流にチューンアップしていくことになるというストーリーは、これはこれでグッとくる展開。

本作はこの第3巻で完結。この第2部、もっともっと読んでいたかった!
作品の終了は残念なのだが、ミニ四駆への興味に火がついたなら、まだまだ終わりではないのかも? そして「ミニ四駆を題材にした作品」というだけでなく、何かに熱くなることへのすばらしさを伝える作品として読んでほしい。
まぁ、ミナト以外は本当に“ダメなオトナ”しか出てこないんですけどね……。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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