『今日のテラフォーマーズはお休みです。』第1巻
服部昇大(著)貴家悠/橘賢一(案) 集英社 \514+税
(2014年11月19日発売)
テラフォーミングのために火星へ放たれた結果、ヒト型に超進化したゴキブリたちと、地球全生物種からよりすぐった能力を遺伝子レベルで組み込んだ人間たちとの死闘を描く、大ヒットSFマンガ『テラフォーマーズ』。
……を、思いきりギャグ方向にふりきった、スピンオフ作品である。
舞台は、地球でも火星でもなく、どこかにある自然豊かな星。
宇宙船アネックス1号の故障で、その惑星に不時着した乗組員たちは、艦が直る数十日のあいだ足止めとなり、思いがけぬお休みを満喫することになる。
しかし! この星にも進化ゴキブリたちがまぎれこんでいた!
ただし、その進化のきっかけは、大昔この星にやってきた地球人が遺した大量のエロ本! やつらは人間の「エロ遺伝子」を取り込み、テラフォーマーズならぬエロフォーマーズになったのだ! ……なんだそりゃ!
かくしてアネックス1号の面々は、乳をもむわ下着を盗むわ尻を盗撮するわとエロ行為をしかけてくるエロゴキブリたちを追い払いながら、バカンスを続けていく。
原典の『テラフォーマーズ』本編が、ぽんぽん手足がちぎれて首も飛ぶ悲惨な展開の連続だけに、にぎやかに遊ぶキャラクターたちの姿には大笑いさせられつつ、どこかほっとするところがある。そして、そこからまた「嗚呼、このキャラやあのキャラは、本編で火星に行ったらあんなことに……」と、再帰的にせつなさを刺激されるのだ。
内容はあくまで純粋なコメディだが、読者的にはそれだけではすまないあたりが、『テラフォーマーズ』のスピンオフらしさといえる。
なお本作は、訓練時代をギャグ仕立てに描いた『教えて!ミッシェル教官 テラフォーマーズ妄想訓練記』(著:セレビィ量産型)、および現代日本を舞台にしたパラレル設定の警察もの『テラフォポリス ばっかも~ん!出る杭課24時』(作:銅☆萬福、画:柴乃櫂人)とあわせた、スピンオフ3作品として同時発売されている。ヒット作に外伝はつきものとはいえ、すごいプッシュぶりだ。
3作品、どれも金髪メガネ美人のミッシェルさんが表紙を飾っており、その看板娘ぶりが熱い。
本編の連載では、現在、えらいことになっていますが……。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7