『あつあつふーふー』第1巻
佐藤両々 双葉社 \648+税
うどんやすいとん、そしてたこ焼きやお好み焼き。粉を使った粉もの料理・粉もん=コナモンは、今も昔も愛されている大衆食だ。
5月7日は、そんなコナモンの魅力を広める「コナモンの日」。民間団体・日本コナモン協会が5=こ、7=なの語呂あわせから2003年に制定した記念日で、コナモン料理の多い大阪などではフェアも行われている。
関西のコナモンご当地が大阪なら、中国のご当地は広島、有名なのはお好み焼き。関西ではモダン焼きといわれる、そば入りでおなじみの広島焼き……いや、広島焼きという呼び方は、広島では認められていない!? そんな豆知識も楽しめつつ、コナモン料理愛と人間愛で楽しませてくれる作品が、佐藤両々のストーリー4コマ『あつあつふーふー』だ。
舞台は、広島のとある街。高校1年の玉名蘭のまわりには、今日も男子たちが集まっている。それというのも、蘭がお好み焼き屋の娘でソースのいい匂いをさせているため!
蘭の家は地元で愛される大衆店で、娘を溺愛する大将は、蘭の友だちにはサービスづくし。店を手伝う看板娘の蘭にとっては、稼業は自慢でもあり、コンプレックスでもあり……。
こちらはさしずめ“熱々夫婦”な、いかついけれど人のいい大将としっかり者の奥さん、後継ぎでカッコいいのに奥手な長男、友人たちが織りなす、笑いありせつなさありの作品だ。
たっぷりの山盛りキャベツとそばに、甘辛ソースの香ばしい匂い。読めば、広島のソウルフードでもあるお好み焼きを食べたくなることは必至! なにより堅苦しくも小難しくもなく、気軽に楽しめながら心もあったかくなって満たされるということでは、本作自体がコナモン料理のような存在で趣き。
コナモンの日に、本作もぜひ味わってみては?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。