日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ヘヴンズドア 小池桂一 Extra Works』
『ヘヴンズドア 小池桂一 Extra Works』
小池桂一 KADOKAWA ¥1,100+税
(2016年7月25日発売)
『ウルトラヘヴン』で知られる小池桂一の、2003年に刊行された初短編集が新装増補版で登場!
「これが×年の作品とは!」という定石的なものいいは安易にしたくないのだが……本作には収められた作品の約半分が80年代に描かれたことには驚きを禁じえない。
緻密なだけでなく、端々にユーモアが見え隠れする洗練された描線はどこをとっても雄弁。セリフなしモノローグなし、まったくのサイレントで展開する作品もあり、コマ割りも実験的なのだが難解さはなく、サービス精神に満ち満ちている!
近未来も江戸時代も、バッドトリップの世界も、少年の日々も。どんな舞台設定も自由自在に描き出す手腕に、あらためて「マンガってすごい!」と思わされるのだ。
マンガは、読もうと思えばかなり早く読むことができてしまう。サッと読んでも理解できる作品はある意味表現力に優れているともいえる――しかし、本書についてはじっくりゆっくり、ページの隅々まで味わってほしいと思ってしまう。
そこに身を投じれば、たしかに別世界を体感できるはず。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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