『七つの大罪』第11巻
鈴木央 講談社 \429+税
(2014年10月17日発売)
2014年10月より放送が開始されたアニメも絶好調の『七つの大罪』。この作品をひと言で言い表すならば、ズバリ「正統派ファンタジー」ということになるだろう。
作者の鈴木央は、週刊少年ジャンプで初の連載作品となった『ライジングインパクト』の頃からファンタジーや中世の騎士物語への強い嗜好を見せながら機会に恵まれず(「ウルトラジャンプ」で連載された『僕と君の間に』はファンタジー作品であったが、かなりアダルト色の強いテイストであった)、様々なジャンルの作品を経て、そして現在刊行中の大手週刊少年マンガ誌すべてで執筆した末に、まさしく“満を持して”発表されたのが『七つの大罪』である。
それだけに、練りに練られた数々の要素は読む者を惹きつけてやまない。当然のことではあるが、堂々と「正統派」で勝負するのが、もっとも作家の力量が問われること。
そんな高いハードルを飛び越え、文字どおり“一気読み”させてしまうほど読者をグイグイと物語に引きつけるパワーに、本作は満ちている。
その吸引力の要因は、まず魅力あるキャラクターにあるだろう。作品そのものにも言えることだが、王道らしく「ベタ」ともいえるド直球に、ときおり織り交ぜられる変化球のバランスが気持ちいい。
手配書にはどう見てもデブのおっさんのように描かれていた「怠惰」のキングが、かわいらしい少年のようなルックスで登場したり(本人的にはキメてるつもりで気を張るとキラキラのおっさんになるという二重のギャップがまたすばらしい)、「色欲」のポジションからして鈴木央お得意のセクシーおねーちゃんかと予想していたら華奢なメガネ男子だったり(ある意味、それはそれで特定層にはベタではありますが!)、いい意味でのちょっとした裏切りがあるゆえに「次のキャラはどんなだろう?」という期待は常に尽きることがない。
また、それぞれが戦う理由や、ふだんは表に出さない内面の描写も絶妙。
たとえば「強欲」のバンが不死身の能力を得るに至ったエピソードは感涙必至モノだが、それでいて「いつまで過去エピソードやってるんだよ!」なんて無粋なツッコミは決して入らない程度の、テンポよく読ませるリズムをキープしたままキャラを掘り下げる手腕はみごととしか言いようがない。
それが主人公側の主要キャラだけでなく、敵となるキャラの信条と心情もさらっと、かつしっかり描いているのがまた心にくい。それがやがては追われる立場である主人公たちの理解者や同胞となるという、まさしく王道の熱い展開に繋がったりするのだから、もう燃えて燃えて仕方ない。