『七つの短編 鈴木央短編集』
鈴木央 講談社 \500+税
(2014年10月17日発売)
『七つの大罪』もアニメ化されてノリに乗ってる鈴木央氏、デビュー20周年目にして初の短篇集。
連載作品の前日譚やスピンオフ、そして連載版の下敷きになった「お試し版」が多めだ。
1本で完結するおもしろさも折り紙つきだが、お試し版は「週刊マンガ誌で連載を勝ち取るまでに、どうやって試行錯誤を重ねてきたのか」がわかって、とてもオトク。
たとえば読み切り版の「七つの大罪」は、メリオダスはエッチじゃないし、エリザベスもガサツ。酒場も移動はするがクモみたいな足が生えていて怖い印象で、連載版で巨大豚の背中に乗って移動するほうがいいよねという感じ。
裏話では、メリオダスが年上でエリザベスが年下というものも含め、何十本ものネームが切られたと明かされている。一流の漫画家は努力も一流なのだ。
幸薄い女の子とキャトルミューティレーションUFOが戦う「カウガール対空飛ぶ円盤」以外は、ファンタジーやラブコメ、フィギュアスケートに拳法ものと、幅広いジャンルでド真ん中の「王道」。
器用で多才な作家さんですね……ではすまない得体のしれなさが、なにかある。
メリオダスもちびっ子、「迷え子羊たち!2」の主人公も高校生のおねーさんに憧れる14歳の少年。で、連載版『七つの大罪』のディアンヌは巨大ヒロイン……そうだ鈴木先生、『ライジングインパクト』もおねショタだったし『ちぐはぐラバーズ』も姉に恋する弟の話だったよ!
『七つの大罪』の大ヒットで、王道マンガを読んでるつもりの小学生男子が、背が高めの女子や年上好きに染め上げられるのが楽しみ、いや心配でたまらない。
<文・多根清史>
「オトナアニメ」(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。