『軍靴のバルツァー』第1巻
中島三千恒 新潮社 \552+税
1866年6月15日、プロイセン王国はオーストリア帝国に宣戦布告を行い、オーストリア管理下のホルシュタイン公国に侵攻を開始した。
きょうは普墺戦争(七週間戦争とも)の戦端が開かれた日である。この戦争に勝利したプロイセンは、みずからを盟主とする北ドイツ連邦を結成し、ドイツ統一に向けて邁進していくことになる。
このプロイセン王国をモデルにしているのが、中島三千恒『軍靴のバルツァー』に登場する軍事国家・ヴァイセン王国である。
主人公のバルツァー少佐はヴァイセンの軍人。友好国のバーゼルラント邦国へと軍事顧問として派遣され、王立士官学校で軍事教官となり、“軍事後進国”の生徒たちをたくましく鍛え上げていく。
ハードコアな「軍事もの」でありながら、教官と生徒による「学校もの」であり、かつバーゼルラントをめぐってヴァイセンとエルツライヒ(オーストリア帝国がモデル)の政争が繰り広げられる「政治サスペンス劇」としての側面もあり、じつに多面的な「戦場オペラ」が楽しめる。
本サイトでも総力リコメンドした作品なので、すでにご存じの読者も多いことと思う。
最新の第7巻では、いよいよバーゼルラント国内でエルツライヒによる動乱が勃発。バルツァーの生徒たちは、「先生不在」のなか、籠城戦へと突入するのであった。
現在も本サイトでは『軍靴のバルツァー』の第1話が試し読みできる。
未読の方は、普墺戦争幕開けのきょう、読んでみてはいかがだろうか。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama