『ヨーソロー!! -宜シク候-』第2巻
三島衛里子 講談社
(2015年8月6日発売)
『高校球児ザワさん』、『私立ブルジョワ学院女子高等部 外部生物語』で人気を博す三島衛里子氏の連載3作目が、今回紹介する『ヨーソロー!! -宜シク候-』である。
タイトルを聞き慣れない方もいると思うが、作中のセリフ「宜しく候――"このままの針路を進め"、だ」が示すように、旧日本海軍などでも使用された航海用語である。転じて「了解」を意味する際にも使用され、筆者のようなミリタリーファンは同好の士と「明日は正午に待ちあわせよう」「よーそろ!」などという会話をよく交わす。余談ながら銀座には、「宜候(ヨーソロ)」という軍歌が唄い放題の知る人ぞ知る海軍酒場がある。
太平洋戦争開戦直後から幕を開ける本作は、航空母艦「蒼龍」乗り組みの零戦搭乗員、戸澤一一等飛行兵曹(通常は一飛曹と略す)を主役に据えた物語である。
「筋を追いかけるような作品ではないです」という三島氏の発言が示すように各回に連続性はなく、コミックス1巻は時に出撃前の無礼講を描き、2巻では時に基地に迷い込んだ犬との騒動を描き、「ヨーソロー」という操舵手のセリフにかぶさる「蒼龍」の画で締めくくられることが多い。
それでも回数を追うごとに、今でいうシングルマザーに育てられた“妾の子”という戸澤の生い立ちが徐々に明かされてゆく。戸澤が不自由な艦内生活を「自由」と評するのはこのあたりが原因。「不況でも三度の食事にありつける」ことから、軍隊を天国と称する山田正助(『男はつらいよ』シリーズでも有名な渥美清演ずる)が主人公の映画『拝啓天皇陛下様』を彷彿させる。