『ゼロセン』第1巻
加瀬あつし 講談社 \400+税
7月6日は「ゼロ戦の日」。
1939(昭和14)年のこの日、零式艦上戦闘機(通称・ゼロ戦)の試作機の試験飛行が始まったことから制定されたものである。設計者・堀越二郎を描いたジブリ映画『風立ちぬ』によって、より関心を持つ方が増えたのではないだろうか。
海軍の主力戦闘機として知られる零戦は、第二次世界大戦の象徴的な存在である。
さて、そこで紹介する本作は『カメレオン』や『ジゴロ次五郎』でおなじみ、加瀬あつしの作品となると未読の方もだいたい想像はつく!?
しかし、この『ゼロセン』、基本はギャグマンガだが、シリアスなシーンも多いのだ。ヘタレ男が成り上がっていくパターンの主人公像ではなく、本作の主人公はビッと筋の通った男のなかの男なのである。
戦時中に殉死したと思われていた旧日本軍兵士・旭歳三(あさひ・としぞう)が、氷づけの仮死状態で発見されるところからストーリーは始まる。
奇跡的に蘇生し、現代を生き始める旭だが、現代の街を歩いて失望する。物質的には豊かになっているが、この国の人々の心は貧しくなっているのではないかと……。かくして、旭は教師として、荒みきった不良学生どもを教育することになるのだ。
生徒たちの前に、ゼロセンに乗って登場するシーンは圧巻!
ワルどもに容赦なく鉄拳制裁をふるう旭だが、その人間性、男としてのあり方は次第に生徒たちの尊敬を集めるようになっていく。
……といっても、そこは加瀬マンガ。男前で大和魂のカタマリのような旭も、根はドスケベ。くりだされる下ネタギャグの密度はかなりのものだ。
まぁ、そんなギャップも旭の魅力なのである!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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