全国の書店さんにオススメマンガを紹介していただくコーナー「書店に聞く!!」。今回は東京都立川市の「オリオン書房 ノルテ店」さんにご協力いただきました。
オリオン書房ノルテ店は、『ONE PIECE』『キングダム』など、巻数が多い作品も全巻取りそろえている、マンガ好きにとっては貴重な書店さんです。
またいっぽうで、レジ前の一番目立つ棚には、ふだんあまりマンガを読まない方にオススメしたいマンガを、新刊を中心に紹介しています。なかでも、比較的お買い求めやすい「第1巻」は積極的に棚に置いているとのこと。
今回は商品部マーチャンダイザー・池本美和主任に、最近発売されて、いまもっとも続巻が楽しみな第1巻のなかから、作者の着眼点・ギャグセンスに感服したという作品をピックアップしていただきました。
オリオン書店 ノルテ店イチオシの3冊!!
『はたらく細胞』 清水茜
『はたらく細胞』第1巻
清水茜 講談社 ¥600+税
(2015年7月9日発売)
人体を構成する「細胞」を擬人化したマンガです。
擬人化マンガはほんとうに数多く出ていますが、思わず“その手があったか……!”と思わされた作品でした。
細菌と戦う白血球が、ぶっきらぼうだけど仲間想いのイケメンだったり、酸素を運ぶ赤血球が元気いっぱいだけどドジっ子だったり、絵柄がかわいらしくて、新刊で思わず手に取ったお客様がそのまま買っていかれるケースが多いようです。
「月刊少年シリウス」の新人賞・大賞を獲得した作者の初連載だけあって、実力もあるし、ふだん見落としがちな人体のことにも詳しくなれるマンガなので、いろんな世代の方に読んでいただきたいですね。
『のぼる小寺さん』 珈琲
『のぼる小寺さん』第1巻
珈琲 講談社 ¥590+税
(2015年7月7日発売)
タイトルのどおり、ボルダリング部に所属する女子高生の小寺さんが、ひたすら壁を登る日常を描くマンガです(笑)。
一番の魅力は小寺さんのキャラクターですね。
クラスで孤立しているちょっと不良の友だちがいたり、普段の生活はミステリアスなんだけど、部活動では先輩にも普通に接していて、ボルダリングに集中している。人づきあいが悪いのかと思いきや、だれよりも早く部室に来て掃除をする優しい心も持っている小寺さんに、“この子はいったいなんなんだ?”と思いながら、ついつい彼女の一挙手一投足に注目しています。
とにかく不思議な魅力にあふれた作品です。
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』 清野とおる
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』第1巻
清野とおる 講談社 ¥650+税
(2015年6月23日発売)
自分にとってはごく普通のことでも、他人から見たら「なんでそんなところに?」と思ってしまう、その人たちの特別な「おこだわり」についてレポートする、実録マンガです。
『東京都北区赤羽』での鋭い着眼点が評判となった清野さんの最新作で、あいかわらず唯一無二の視点から「おこだわり」を描いていて、“もっと変わった人がいるんじゃないだろうか?”“もっと変なこだわりがあるんじゃないだろうか?”という気分にさせてくれるマンガです。
ツッコみながらもそれぞれの「おこだわり」にハマっていく作者。「月刊モーニングtwo」連載中なので、続巻まではまだかかりそうですが、楽しみに待ちたいと思います。
番外イチオシ
『キングダム』 原泰久
『キングダム』第38巻
原泰久 集英社 ¥514+税
(2015年4月17日発売)
こちらは、ほかの作品と異なってすでに10年近く連載が続き、現在第39巻が発売中のロングラン作品です。物語は秦の始皇帝がまだ若いころ(春秋戦国時代)の中国を舞台にした、大将軍を目指す少年・信の成長を描いたものです。
アクション描写の巧みさと重厚な歴史ドラマで、以前から評価の高かった作品だったのですが、なかでも武勇にすぐれて戦略にもたけて序盤に大活躍を見せて人気の高かったキャラクター、秦の大将軍・王騎が死亡した第16巻あたりでわずかに売れ行きにブレーキがかかった印象を受けたのが、最近になって複数巻あるいは全巻購入するお客様が急増して、驚いた作品です。
それというのも、5月に放送されたテレビ朝日の人気バラエティ番組『アメトーーク』のトークテーマに選ばれたことが原因のようで、放送翌日から売れ始め、あっという間に品薄になってしまったんです。現在やっと全巻そろってお求めやすくなりましたが、今でも抱えるようにしてお客様がお買い求めいただいている作品です。