このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

【日刊マンガガイド】『甘露に肩想い』第2巻 黄島点心

2014/07/27


kanroni_s02

『甘露に肩思い』第2巻
黄島点心 双葉社 \620+税
(2014年7月10日発売)


誰とも似ていない、濃厚な“マンガ文体”。
筆者の個人的な話になってしまい恐縮だが、本屋でマンガをアホみたいに買う人間として、年齢が上がるにしたがい、そんな文体を持っている作家には、無条件に近く大きな価値を感じてしまう。読み手としての自分には、ヒットするかどうかよりも、そういう作家の新作を読むことこそが喜びという実感が、たしかにある。

「人面瘡ラブコメ」という未知のジャンルにつっこんだ本作『甘露に肩想い』の作者・黄島点心も、まちがいなくそういう作家だ。
話の運びかたから、登場人物のぶっとんだキャラ設定、構図のキメキメ度合いまで、従来のマンガ文法とはどこか違う、トリッキーなユニークさが炸裂している。なおかつ、それが「ストーリーだけスッと追って、ちゃちゃっと感情移入したい」ラブコメジャンルのメイン読者層を不愉快にさせたり、置いてけぼりにしそうなものに見えるから、たまらない。

人面瘡を身につけた甘露ちゃんの恋……よりも、この「マニア向けに見えるけど、マニア受けするツボともどこか違うポップさ」を抱えた、ユニークすぎる作品そのものが、うまく続いて、ちゃんと続刊が出ることを願いつつ!



<文・大西祥平>
マンガ評論家、ライター、マンガ原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)など。「映画秘宝」(洋泉社)誌ほかで連載中。

単行本情報

  • 『甘露に肩想い』第2巻 Amazonで購入
  • 『甘露に肩想い』第1巻 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング