日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは『青春のアフター』

『青春のアフター』第1巻
緑のルーペ 双葉社 ￥620+税
（2015年8月10日発売）

皆さん、初恋してますか？　あるいは、してましたか？
そして、初恋の“その後”って、どうなりましたか……？

こう問われて、明確に“その後”を語れる人って少ないのではないだろうか。
あるいは新しい恋愛感情に上書きされ、あるいはその過程でやらかした失敗・失態がきっかけで記憶から逃げ出し、初恋の多くは甘くて苦い、そしてできれば超絶に思い出したくない記憶として胸の奥に秘められることになる。

本作の主人公・鳥羽まこともそのひとりだった。
16年前、通う価値すら見出せないしょうもない高校で、ゲームがきっかけで親しくなったクラスメート・十和さくら。だが鳥羽は、友人・倉橋のことを好きなさくらの恋路を邪魔したうえに、「なんでアイツなんだよ」と、告白までしてしまったのだ。
その後、彼女は失踪。“物理的に”鳥羽の目の前から去ってしまう。

そして16年。さくらとの思い出でもあるゲームにたずさわる仕事についた鳥羽は、同棲相手を見つけ、かつての“失恋”に新しい現実的な恋を上書きできるかに思われた。
しかし、いよいよ同棲スタートという瞬間、突然さくらが姿を見せる……16年前と同じ姿で！

どんな理由で、あの時のさくらが現在に？　それすらわからないまま、やむなく同棲相手の上牧みい子にわかる限りの事情を明かして、さくらを同居させることにした鳥羽。
初恋の相手と今カノの3人による、奇妙な同居生活が始まった。

高校生のままのさくらと大人になった鳥羽のジェネレーションギャップや、彼女と“現在”との16年間のカルチャーギャップなど、比較的ライトに、コミカルに描かれつつも、そのいびつさは加速度的に進行する。
第1巻はさくらのかつての想い人で、飄々とイイ大人になった倉橋の登場、そしてもう一件の大事件で to be Continued（続く）。
この先、鳥羽をさらなる“痛み”が襲うことは間違いないだろうが、我々も同様に胸かきむしりながら読まないわけにはいかない。

＜文・富士見大＞
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、「月刊ヒーローズ」（ヒーローズ）ほかに参加する。ただいま好評発売中の『バケモノの子 オフィシャルガイド』、『「仮面ライダードライブ」フォトブック～Drivin’Album』もやってます。