日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『セキララにキス』
『セキララにキス』第1巻
芥文絵 講談社 ¥429+税
(2015年9月11日発売)
人から嫌われることは怖いですか。
怖いですよね。私もです。
これは、それを極端に恐れて生きてきた女の子が、それまで身につけてきた防御の鎧を取り払って、ありのままの自分で世界へ歩き出す物語。
人から拒否されることを恐れて、完璧な「仮面」をかぶれるようになった千歳(ちとせ)。
いつもにこやかで人を傷つけず、本心は巧みにその下に隠していた、つもりだった。
ある日千歳は盗撮にあってしまい、樹(いつき)という青年に助けられた。
千歳は彼の瞳になぜか心ひかれ、あとを追う。
たどり着いた先にあったのは美術予備校。そこの生徒たちはみな生きる目標が定まっていて、それが千歳の目にはうらやましく映る。だって、自分には何もないのだから――。
そして樹に学校を案内してもらうことになるのだが、彼女は途中で彼に仮面を見すかされてしまい……。
さて、このマンガ、ストーリーのテンポもバランスもすばらしい。
主人公が仮面をはずしていいのだと気がつくタイミングもほどよく、そこから少しずつ自分を出していく様子も好ましい。
さらには樹のS度合いの絶妙さ! オレ様過ぎず、自由でイマドキで時にゲスくて、ともかくすごくいいバランスなのだ。
ストーリーは、やはりところどころひどく胸に刺さる。
多かれ少なかれ、社会的な仮面を装着したことのある人ならなおさらだろう。
しかし痛みとワクワクが同時進行でやってくるので、読み進めていくのがとても楽しい。
何も仮面や鎧などつけなくても、自分そのものの形でやっていく方がはるかに人生おもしろいし、それでいいのだと思えてくる。
生きることを肯定的にとらえさせてくれる素敵なストーリー。今後の展開が楽しみだ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」