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【日刊マンガガイド】『ぼくは麻理のなか』第3巻 押見修造

2014/06/23


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『ぼくは麻理のなか』第3巻
押見修造 双葉社 ¥648
(2014年6月9日発売)


アパ―トでゲームとオナニーに明け暮れる大学生の「ぼく」が、コンビニで見かける天使のような女子高生を尾行していると、なんと突然、自分の体が彼女=麻理に変化してしまい……。

先日完結したばかりの『惡の華』と同時に押見修造が連載していた、文字どおりの「こじらせ」青春ストーリー。
巻を重ねるごとに、どんどんおもしろくなってきている。

導入部は、青春系エンタメにおける定番のひとつといっていい「入れ替わりもの」だが、本作に仕掛けられたフォーマットは、我々が過去に何度も体験してきた“例のアレ”ほど単純なものではない。
1~2巻と読んできて、筆者もある程度「なぜこうなったのか」の予想をしていたが、最新3巻のあるシーン(ちなみに2カ所ある)では、思わず「そう来るか!」と唸ってしまった。
倒錯したセクシャル要素に不穏なサスペンス要素が絡んできて、なんかブライアン・デ・パルマの映画を観てるみたい!

個人的に、押見作品の大きな魅力として、ドラマ作りのモチベーションと、作者の個人的な性体験やトラウマが常に直結している“私小説性”があると思っている。
総括的な大作となった『惡の華』の完結と並行して、いよいよ「過去」ではなく、未体験ゾーンの「願望」のほうで勝負をかけてきた、というニュアンスが垣間見れるあたりも、じつに頼もしい。

余談だが、作者が自分の「女の子になりたい欲求」について熱く語った1巻のあとがきマンガは、「そんなことおっしゃられても……」感がたっぷりすぎて、どん引き必至の内容にもかかわらず、妙に心に響くものがある。
筆者のなかでは、殿堂入りクラスの「あとがきマンガの傑作」ということも付け加えておきたい。



<文・大西祥平>
マンガ評論家、ライター、マンガ原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)など。「映画秘宝」(洋泉社)誌ほかで連載中。

単行本情報

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