日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『はごろも姫』
『はごろも姫』上巻
海野螢 リイド社 ¥500+税
(2015年10月27日発売)
平安時代初期。富士山が噴火した。
その時、母を失った少年・龍之介は、盗人集団の一員になって暮らしていた。
ある日、彼は海辺で全裸の少女に出会う。浮世離れしたしゃべり方の少女・さくやは、羽衣を探してほしい、と彼に言い出す。
さくやを売り払おうとする盗人のアニキ分。盗人だった龍之介を追いかける国司。羽衣とさくやに興味を持つ公家。
3つの勢力に追われながら、さくやの羽衣を探す、2人の旅が始まる。
道中で起こる様々な出来事をつづった、ロードムービー作品。
江戸時代の記録に残っている伝説の異形の船「虚ろ舟」も登場。SF的な匂いもただよっている。
「ある日、見知らぬ女の子と出会って」というボーイミーツガールの平安時代版。
歴史的な知識がなくても、少女を守ろうと奮闘する少年の物語として、すんなり楽しめる。
龍之介から見たさくやの姿は、とてもコケティッシュ。思春期目線のドキドキが、彼女の描写から伝わってくる。
なんせさくやは、全裸に一枚の反物を巻きつけただけの衣装。そら気にもなりますわ。
そして男の子は、女の子のためにだったら、どんな苦境でもがんばろうとするものでしょう?
海野螢作品はどの作品も、コマ割りに大きな特徴がある。
長方形をまっすぐ並べた、通常のコマ割はない。斜めのコマ、重なったコマ、コマが割られていないキャラクター配置。1ページのなかで、コマのレイアウトが自由自在に組まれている。
これがじつに読みやすい。視点が動く方向にあわせて配置されており、同時にコマ割自体が演出になっているからだ。
映画のような、動きのある画面づくり。マンガでしかできない、遊びを含んだコマ表現。
著者はマンガを、独自の手法で進化させ続けている。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」